一方、1人で書いたメールには、本に書いてあることだけでなく、著者から聞いた話や、編集者の意見、そして自分の考えたことをすべて詰め込んだ。

 とくに意識したのは、本のよさや著者の魅力を伝えるだけでなく、番組ディレクターさんの立場になって、「どうすれば喜んでもらえるだろうか」「どんな企画であれば興味を持ってもらえるだろうか」といった視点で工夫を凝らしたのだ。

先方が企画会議で
プレゼンしやすいメールを送る

 ほとんど自分がしゃべっているみたいに書いた。誤字脱字や、日本語としておかしいところはあったかもしれない。

 とにかく、番組ディレクターさんが企画会議でみんなの爆笑を取っている姿を思い浮かべながら、それだけを考えてメールを書いた。

 けれどそのメールを見たディレクターさんから返信が来て、「メールありがとうございます。企画通りました!たとえば、他にもこんなこともできたりしますか?」と話が広がっていったのだ。

 この経験をきっかけに、僕はメールを送るときはまず、「どうすれば受け取った相手が企画会議を盛り上げられるか」を考えるようになった。

 必ずしも素晴らしい提案でなくてもいい。相手が知らない情報の共有。素早い返信。クスッと笑える内容。形はさまざまだ。

 相手の顔を思い浮かべ、ときにはニヤニヤしながら「このメール受け取ったら、あの人、きっと喜ぶだろうな」と思いながら書くのだ。

 それ以降、僕のメールは相手に届きやすくなり、提案する企画がテレビや雑誌、新聞で取り上げられる確率がどんどん上がっていった。

 僕がメールを書くときに大切にしていることがある。それは、メディアに取り上げてもらえるようアピールするよりもまず、「黒田さんからメールをもらうと嬉しい」と、相手から思ってもらえるように考えることだ。

 言葉を届ける入り口は「メディア」ではなく、あくまでも「人」なのだ

Bccをやめるだけで
返信率は劇的に上がる

 一斉メール送信でリリースを送るのは、一見効率的に見える。でも僕に言わせると、それは、長い行列の最後尾に並んでいるように思えるのだ。

 僕の仕事は、その行列に並ばずに、どうしたら直接相手に届くかを考えることだ。