一斉メールにも、もちろん意味はある。とくに「ちょうどその情報を必要としていた」という人には有効だ。ただ、届いた相手の心を動かしづらいのは「みんなに送ってるんですよね?」と思われてしまうからだろう。

 だから僕がメールを書くときに大切にしているのは、相手に「なるほど、だから私に送ってきたんだな」と思ってもらうことだ。

 なぜなら、届けなければいけない相手は、パソコンやスマホの画面ではなく、相手の心だからだ。リリースを送ったとしても、受け取った相手の心が動かなければ、行列に並ぶ意味がない。

 そこで僕は、メールを送るときには、相手に合わせて1件1件オンリーワンな文章にするようにしている。オンリーワンといっても、まるごとオリジナルにする必要はない。

 工夫するのは最初の2行、あるいは最後の2行だ。本題とは別に、2行だけでいいから、相手が関心を持ちそうなトピックをさりげなく話題に入れるのだ。

「今度、東京マラソンに出場します!サブフォー目指してます!」そんなことをメールの最後に書いてみる。すると、「黒田さん東京マラソンに出るんですね!頑張ってください!」と、普段は返信がこないディレクターさんから連絡が来たりする。

 行列に並ばず、結果的に“割り込み”した状態になるのだ。

 ビジネスだからといってメールにしなければ、とこだわらず、相手によってはLINEやショートメールで送るのが効果的なこともある。

 つまり、相手の印象に残る届け方を徹底的に考えるのだ。

 このひと工夫を手間に感じてしまう人もいるかもしれない。ただ、人と同じことをしていては、人と同じような結果しか得られない。

 誰にでも送れる内容は誰にも伝わらない。1人に深く響いた言葉こそが、結果として多くの人に届く力になる。非効率なひと手間をかけるからこそ、他の人との差を生むことができるわけだ。

“割り込み”でずるいかもしれないけれど、だからこそ効果的なのだ。