また生活習慣病によって、腸に向かう血管に動脈硬化症が生じると、余計に腸の動きが悪くなり、便秘になってしまいます。

 このような理由から、高齢者はトイレで長い時間「きばる」のです。

 きばれば血圧は上昇し、脳血流が増加。これにより、動脈硬化の進行によって脳に形成されていた動脈瘤が破裂して、脳血管系疾患を起こすことがあります。

 なお、脳血管系疾患を発症すると激しい頭痛に襲われますが、すぐに心臓停止や意識消失には至りません。頭痛に耐えながらトイレから這いずり出て、携帯電話で助けを呼ぼうとして倒れこむので、ご遺体の膝に擦りむき傷ができるわけです。

 日常的に使用するトイレも、高齢者にとっては突然死しかねない場所であることを理解して、用を足すときには気をつけてほしいですね。

【このような危険を避けるには…】
・食物繊維が含まれる食事など、便通がよくなる食生活を心がける。
・家族は高齢者が便秘になりやすいことを理解する。
・便通が悪い場合には医師に相談し、適切な処方を受ける。

老後の孤独に耐えられず
定年退職後に死ぬ

 高齢男性が、自室で黒っぽい血液を吐いて亡くなっているのが発見されました。

 身体が黄色く、部屋に空になったお酒の容器がたくさんあれば、その状況だけで私たちは「アルコール性肝硬変にもとづく食道静脈瘤破裂」と判断します。

 亡くなった人は「アルコール依存症」で、昼夜問わず飲酒していたのでしょう。こうして亡くなった人たちの部屋には、30年前は日本酒の瓶、25年前は日本酒の紙パック、20年前からは焼酎の大きなペットボトルに変わり、最近ではアルコール濃度の高いレモン割り缶チューハイが多く転がっているようです。

 お酒に含まれるアルコール成分の多くは、肝臓で代謝されます。このとき、血管内の脂質もアルコールによって肝臓へと運ばれ、蓄積されて「脂肪肝」になります。溜まった脂肪組織は柔らかく壊れやすいので、肝臓はそれを補修しようと線維を増やして硬くなり、「肝硬変」となります。

 すると肝臓を通る「門脈」という血管が通りづらくなって、血液が別の血管を迂回するようになるのです。