「不満はないけどなりたい姿じゃない」
新卒3年以内で辞めた若者の生の声

 安定しているはずの大企業から若手が辞めていく――。その要因の一つは、「上司」です。

 私は2011年から、新卒入社後3年以内に会社を辞めた人、約400人へインタビューをしてきました。その中で、大企業を辞めた人からは次のような声を聞いています。

裏では(お客さんや上司の)悪口ばかり言っているのに、いざ本人の前だとヘコヘコしている上司や先輩を見て、こんな大人になりたくないと思いました。なにより、そんな人たちに反論もできずに、愚痴を言っている上司の愚痴を言っている自分が情けなかったです。
(メガバンク 総合職)
上司は部署の数字を上げる人なので、経営陣からした優秀な人だと思うんです。でも、私たちのことを駒としか見ていませんでした。私から「話があります」と言って打合せ設定しても勝手にスキップされることも何度もありました。
(大手IT業 ビジネス職)
総合的に大きい不満はなかったんですけど、20年目の人たちを見ても、なりたい姿じゃなかったんです。尊敬できる人もいましたけど、そういう人は少なくて、残念な気持ちでした。
(大手食品製造業 研究職)

「尊敬できる上司や先輩がいなかった(少なかった)」という言葉は、多くのインタビューで耳にします。また、この言葉の前には「優秀な人ではあったけど……」という枕詞がつくことも多いです。

 つまり、会社を辞める若者の多くは、「優秀だけど尊敬できない」上司のもとで働いた経験があるともいえます。

尊敬できない上司が生まれる
2つの理由とは?

 なぜ、尊敬できない上司が生まれてしまうのでしょうか?

 日本では多くの場合、プレーヤーとして一定の成績を残した人が管理職に昇格します。

 管理職は全社員の10%程度といわれているので、それなりに狭き門をくぐり抜けて管理職になっているはずです。つまりプレーヤーとしては優秀だった人が、出世して「尊敬できない上司」になってしまっているのです。

 その理由について、2つの仮説をお伝えします。