明日に、次の日に、次の月に、次の年に、
市場がどこへ向かうかは見当もつかない。
わたしにわかるのは、株が最終的に本来の価値で、
少なくとも本来の価値の範囲内で、
売られる傾向にあるということだ。
落ち着くまでのあいだ、
株価はどこへ飛んでいくかわからない――
しかし、結局は真の価値に行き着く傾向にある

 83年間に及ぶ株売買の経験は、ある企業の株がどれだけ暴騰しようとも、反対にどれだけ暴落しようとも、いつかは営利企業としての真の価値で売られることとなる、という教訓をウォーレンに与えてきた。近視眼的な株式市場がある企業を売り叩き、基幹ビジネスの長期的経済性を下回る値段がついたとき、この先の展開を彼は知っている。やがては市場の再調整が入り、真の価値を反映させるべく株価が上昇すると。そう、ここがウォーレンの金の儲けどころなのだ。

金の卵を生み出す
“パニック売り”

我々の意見を言わせてもらうと、
活発に取引をする金融機関を“投資家”と呼ぶのは、
一夜かぎりの情事を繰り返す人物を
ロマンチックと呼ぶようなものだ

 OK。しばしここで立ち止まり、上記の件についてじっくり考えてみよう。ウォーレンは以前から株の短期取引を愚行への招待状とみなしてきた。なぜなら、短期取引は完全な投機行為であり、個別銘柄もしくは市場全体の経済性をネタに、刹那的な風向きや趨勢がどうなるかで博打をしているからだ。確実性などあったものではない。

 ウォーレンは短期取引を愚行とみなし、やめるようアドバイスをしているが、皮肉にも、彼に提供された投資の好機はどれも短期取引が創り出したものだった。推計によれば、すべての投資ファンドのうち、短期に重点を置くファンドは最大90パーセントを占めており、短期重視型ファンドは、経済が気まぐれを起こすたび、株に入れ込んだり見放したりする。金利が上がっている――撤退しろ!金利が下がっている――買え!次の目玉はAIだ――買え!ギリシャが債務不履行を起こしそうだ――売れ!欧州中央銀行が救済に動き出しているぞ――買え!ウォール街で銀行がいくつか破綻しそうだ――全部売れ!