今年5月、日本で開催する国際交流会議に出席するため、世界最大のNGO団体であるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)のアベッド会長が来日した。滞在中、アベット会長は、かねてから注目していた公文教育研究会を訪問する。その対談の場に、筆者は特別に同席させてもらった。「子どもの教育」は、日本にとってもバングラデシュにとっても共通の課題。ファズル・ハサン・アベッド会長と角田秋生社長との対談からは、意外にも両者の活動に多くの共通点が浮かび上がった(BRAC、KUMONそれぞれの取り組みについては、対談のあとの5ページで紹介しています)。

貧困の撲滅には
教育こそ最も重要

ファズル・ハサン・アベッド
Fazle Hasan Abed
1936年バングラデシュ生まれ。ダッカ大学とグラスゴー大学で学び、会計の専門家としてシェル・オイル社の経営幹部に就任する。その後、1971年のバングラデシュ独立戦争勃発後に退職、ロンドンから祖国独立戦争の支援に身を投じる。戦争終結後、独立国となったバングラデシュの復興支援のためにBRACを設立し、以降、貧困農村地域の生活向上という長期的課題に取り組む。英女王より聖マイケル・聖ジョージ勲章ナイト・コマンダー(KCMG)を、また立教大学など世界の大学から9つの名誉博士号を授与される。来日は5度目。Photo by Konatsu Himeda

角田 将来を託す子どもたちに、学習機会を与え能力を伸ばすことが私たち大人の責務です。今日はアベット会長と、子どもたちの教育について何ができるのかを語り合うことにわくわくしています。KUMONとBRACがこれまでどのような取り組みをしてきたのか、お互いを知る良い機会の場になればと思います。

アベッド 私もかねてから米国やその他の国々で公文の活動に注目してきました。本日は角田社長にお目にかかれて大変光栄です。私はバングラデシュで42年間貧困撲滅の活動を行ってきましたが、中でも教育が最も重要な貧困撲滅活動です。

 バングラデシュの最大の問題は貧困、その撲滅は教育からだと私は思っています。

 現在BRACは3万8400校の小中学校を抱え、そこで111万人の生徒が教育を受けています。このBRACスクールは、学校に行けない最貧困層の子どもたちに教育機会を与えるために設置されました。バングラデシュには、貧困のために学校に行けない、あるいは途中でドロップアウトしてしまう生徒もいます。また、場所によっては2時間かけて学校に通学しなければならないなど、さまざまな理由により教育を受けることができない子どもたちが存在します。

 BRACは特に、遠距離通学が困難な女子への教育を重視しており、生徒の7割を女子が占めています。その一方で、ミドル層への教育も重視しています。そもそも公立校は1クラス当たりの人数が多いため、細かいケアが行き届かない、という実情が存在します。

角田 海外展開も積極的だと伺っています。