インテルへの戦略なき米政府出資Photo:picture alliance/gettyimages

 米国政府は歴史的に民間企業への資金投入を避けてきた。最も有望なリターンがどこにあるかについて、市場の判断を上回ることなどできないからだ。

 しかし例外もある。時として、企業や産業が公的支援なしでは破綻する危機にひんし、破綻すれば株主や従業員だけでなく、国全体に打撃を与えることになる。

 米半導体大手インテルは、この両方の条件に当てはまる。破綻しつつあるわけではないが損失を出しており、中核事業は衰退し、最先端の半導体を製造するために必要な資本と顧客を欠いている。

 インテルが破綻すれば半導体産業基盤の相当な部分が失われることになる。中国との存亡をかけた競争が続く現在、これは国家的な緊急事態だ。

 米シンクタンク、ランド研究所のテクノロジー担当シニアアドバイザー、ジミー・グッドリッチ氏は「これは危機的状況であり、過去にも危機の際に政府が直接介入したことがある」と述べた。

 米政府は2007~09年の景気後退(リセッション)期に銀行と自動車会社に資金を注入した。銀行と自動車会社の存続が「国家安全保障と生活に関わる問題だったように、半導体を生産する能力も同様だ」とグッドリッチ氏は指摘した。

 これはトランプ政権がインテルの9.9%の株式を取得したことの合理的な根拠となる。しかし、トランプ氏が主張しているのはそうした根拠ではなく、動機は単純に金銭的なもののようだ。同氏はソーシャルメディアで「インテルに対する支払いはゼロだった。その価値は約110億ドル(約1兆6200億円)相当だ」と投稿した。