1on1MTGと従来型の面談の決定的な違い

 多くの企業が見落としがちなのが、「1on1ミーティング」と「従来型の社員面談」の違いです。では、何が違うのか?

 最大のポイントは、上司の関わり方です。従来の面談では、上司が「指導者」として、指摘や指示を与えることが中心でした。対して1on1ミーティングは、上司が「支援者」として、部下の話を引き出し、可能性を伸ばすことに主眼を置きます。

 つまり、「主役は上司」ではなく、「主役は部下」です。この前提を見失った1on1は機能しません。形式をなぞるだけの「なんちゃって1on1」が生まれてしまうのは、まさにこの違いを理解していないことにあるのです。

 また、「1on1で、親身に話を聞けばいいのでしょう?」というのも誤解です。実際には、ミーティング中よりも、日常でどれだけ社員を“観察しているか”がはるかに重要なのです。

 1on1の質を決めるのは、上司の「観察する力」です。部下の働く姿、発言のクセ、得意・不得意、コンディションの変化などを日常業務で丁寧に見ることなのです。

 観察とは、特別な行動を見つけることではありません。「朝一番に資料を整理していた」「後輩の質問に丁寧に答えていた」――そうした何気ない行動の中にこそ、その人らしさや価値が現れます。

 それを、1on1の場で「資料整理してくれていたよね、助かったよ」「あのときのフォロー、すごくよかった」と言葉にして伝える。観察と承認がセットになったコミュニケーションこそ信頼関係を築く基盤となるのです。

「ちゃんと見てくれている」と社員が感じるからこそ、1on1でのフィードバックが伝わるのです。逆に、普段の様子をまったく見ていない上司が何を伝えても、「私のことなんて、知らないくせに」となります。

 信頼は、面談のテクニックではなく、日々の観察と、それを言語化する姿勢から生まれます。人は、自分を「理解しようとしてくれる存在」に心を開き、支えられている実感があるからこそ、挑戦し、成長しようとするのです。1on1の本質は、「話すこと」「聴くこと」ではなく、「見ること」にあるのです。