1on1の効果をさらに高めるために

 社員の日常を丁寧に観察する習慣が身に付いたら、その効果をさらに高める取り組みが、「目標達成の支援」です。

 筆者の会社では、半年~1年後の「理想の自分」を個々人が具体的に描き、実現に向けた目標を自分の言葉で設定する仕組みを取り入れています。この目標設定は、社員と上司が対話を通じてすり合わせを行い、会社の方向性と個人の意思が一致する状態をつくることを重視しています。

 その目標が明確になった後に、1on1ミーティングの本領が発揮されます。この時間を活用して、目標達成のプロセスを共に振り返り、壁にぶつかっていれば支援し、進捗があれば称賛する。単なる管理ではなく、社員の挑戦を見守り、後押しする時間として機能させることが、上司に求められる役割です。

 人は、自ら描いた未来像にこそ本気になれます。目標設定と、それを支える1on1ミーティングの連動が、社員の主体性と成長意欲を引き出す鍵となるのです。

部下が1on1を「楽しみに」しているか?

 私が見てきた中で、成果を上げている組織には、共通点があります。それは、「部下が1on1を楽しみにしている」ということです。

 制度だから仕方なく応じるのではなく、「あの時間があるから頑張れる」「自分の成長を振り返る貴重な機会」として、社員の側がその時間を“求めている”のです。

 1on1ミーティングは、部下が安心して自分の課題や思いを共有できる、心理的安全性の高い「育成の場」となっているのです。繰り返しますが、主役は部下です。

 1on1において本当に重要なのは、「関わり方」です。相手の可能性を信じ、丁寧に観察し、「なりたい自分」に向けた目標達成を支援し、気づいた成長や強みに対し、惜しまずフィードバックを行う。これらを継続していくことで、1on1は単なる制度から、組織を育てる“成長エンジン”へと進化していきます。

 まずは、1on1の前に、部下の行動を3つメモしてみてください。小さなことでも構いません。その観察と言語化が、信頼と成長のスタートになります。