今年はマネジメントの父、ピーター・F・ドラッカー没後20年を迎えます。そのマネジメント論は現代でも深く息づいています。
「マネジメントの基礎を身につけたい」
「リーダーとして、どうメンバーに接したらいいのかわからない」
「管理職として仕事をしてきたけど、うまくいっていない気がする」
「ドラッカーは難しそうだから、今まで触れてこなかった」

そのような悩みを解決するヒントが詰まった書籍『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』が発売されます。本書は、これまでドラッカーを知らなかった人でも物語の中でその本質を学べる1冊です。
本記事では、著者の吉田麻子氏がドラッカーから学べることをストーリー形式で解説します。

「部下がちゃんと仕事してるのか不安…」管理職が行うべき“シンプルな問い”Photo: Adobe Stock

プロローグ:白井課長の苦悩

静かなオフィス。それぞれのデスクでは部下たちがパソコンに向かって仕事をしている。

白井課長(仮名)は、そっと一人ひとりの様子を眺める。

「自分が若い頃にはもっとオフィスに活気ある会話が溢れていたように思う。それに比べて今は皆大人しく、消極的な様子に感じる……」

つい、自分の経験と比べて物足りなさを感じてしまう。

あまり過度に管理はしたくないが、本当に彼らがいま仕事を進めているかどうかが気になってしまう。

――普段から精力的に仕事をしているかどうかを知りたい……。

少し間違えるとパワハラだということにならないよう、声をかけるにも慎重だ。

「何かうまい方法はないものか」

白井課長の脳裏にドラッカーの本の一節が思い出された。さっそく本棚で探してみるとこんな文章があった。

「先日『ニューヨーカー』に出ていた漫画がある。ドアにはエイジャックス石けん会社チャールズ・スミス販売部長とあり、壁には『考えよ』との大きな額が掛かっている。事務所の中では、男が机の上に足を投げ出し、天井に向かってタバコの煙の輪をつくっている。通りがかりの二人の男が、「本当に石けんのことを考えているのか、わからんな」と話している」

ひとりひとりの生産性を高めるには?

これはドラッカーの『経営者の条件』の『第一章 成果をあげる能力は修得できる』に書かれている文章です。

「知識労働者が何を考えているかは確かめようがない」

「考えることが彼らのなすべきことである」

と続きます。

ドラッカーは肉体労働者(manual worker)に対する知識労働者(knowledge worker)という言葉を用い、自ら考え行動する人である知識労働者の生産性の必要性を説いています。

確かにぱっと見ただけでは知識労働者の頭の中まではわかりません。

誰もが知識労働者である現代社会において、組織のメンバーの一人ひとりの生産性を高めていくにはどうしたらいいかをドラッカーの言葉で学んでいきましょう。