アンケート分析、申請書チェック、番組内のCM制作、トレンド予想……
研修で生み出されたAIエージェントには、現場ならではの創意工夫が表れている。
研究開発本部からの参加者は、製品アンケートの分析を自動化するアプリを開発した。ユーザーテストで得られる「甘すぎる」「ちょっと甘い」といった多様な表現のフリーアンサーを有効活用することが狙いだ。
開発されたアプリは3段階のプロセスを踏む。まずは生成AIでワードを抽出し、次に似たような表現をグルーピング。最後は生成AIが苦手な集計をDify内で正確に処理する。「今まで集計止まりだったのが、より発展的な活用ができる下地が整った」という。
研究所の業務管理部門は、申請書チェック自動化アプリを開発した。ガイドラインへの適合性チェックや、見落としがちなミスの発見など、長年の経験で培ったナレッジを丁寧に落とし込んだ。
開発したのは、研究一筋30年のベテランだという。「生成AIが出始めた頃から『これをなんとかしたい』と熱心に相談してくださっていた。そういう課題を持った人が、自分の手で解決できる世界になってきた」(山岡氏)
他にも、各部門で開発が進んでいる。
クリエイティブ部門が開発したのは、TV番組内CM制作の支援アプリ。新商品や登場人物を指定すると、過去に制作した大量のシナリオを参考にした台本が生成され、発想が広がらないときに思考を助けてくれる。これにはその道のプロも「結構すごい」と驚いていたという。
マーケティング部門が開発したのは、未来洞察アプリだ。世の中のニュースを生成AIに分析させ、将来のトレンドを推察する。まだ実証実験段階の技術であっても、今後どのような可能性が広がり、それがライオンにどのような影響を与えるのかといったインサイトを生成してくれる。
開発したマーケティング担当者は、AIを「発想を"飛ばす"ための道具」と位置づけ、「もっと発想を飛ばしたい」と話しているという。「"飛ばす"とは何かを人間が言語化できないと、結局プロンプトに落とし込めない。今は一緒に"飛ばす"とは何かを模索している」(大吉氏)