今じゃ大人気の『アンパンマン』が、当初子どもに刺さらなかった理由【あんぱん第118回】『あんぱん』第118回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第118回(2025年9月10日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

のぶ、ショートカットに

 15分で1969年から73年まで一気に進んだ。

 整理しておこう。

1969年 雑誌にはじめて『アンパンマン』が掲載された。
1970年 嵩(北村匠海)の初監督作『やさしいライオン』ができて上映された。
1973年 八木(妻夫木聡)の会社がキューリオになり、雑誌『詩とメルヘン』創刊。嵩、編集長になる。のぶ(今田美桜)
はショートカットにする。

 まず、69年、雑誌に掲載された『アンパンマン』を、のぶは子どもたちに読み聞かせることにした。子どもたちは八木(妻夫木聡)に呼びかけてもらった。

 だが、子どもたちは、太ったおじさんの主人公に興味を持たない。

 物語のなかでは子どもたちが戦争で飢えてしんどい思いをしていて、アンパンマンがアンパンを届けてくれるのに。現代っ子は口が肥えており(この時代は高度成長で豊かだったはず)、アンパンよりアイスクリームがいいという。

 アンパンマンよりスーパーマンがかっこいいと口々に。

 第1回の読み聞かせは手応えなく終わった。

 それに気づいている八木と蘭子(河合優実)。なんで蘭子はまた八木と一緒にいるのか。

 のぶは弱音を吐かない。また読み聞かせをさせてほしいと頼む。

 のぶは嵩に黙っていてと蘭子に頼む。

 蘭子は「こじゃんといい話やね」と共感するが、子どもにはわからないかもと冷静。

 どうしたらいいかと悩むのぶに「思いきり走ればいい」と蘭子は助言する。

 思いっきり走ってあっという間に3年、昭和48(1973)年、のぶは嵩に内緒で読み聞かせを続けた。サラサラストレートだった髪がショートカットになって、すこしおばさん感が出た。

 それにしても3年も嵩に内緒でアンパンマンの読み聞かせを続けるとは、なかなかである。