甲子園では微笑ましいけど…「内輪びいき」の組織を活性化する“2つの処方箋”写真はイメージです Photo:PIXTA

思わず地元の県の高校を応援してしまう

 夏の甲子園が始まると、ふとテレビをつけてしまう。

 普段は野球を熱心に見るタイプではない(サッカー派である)。それでも、この季節になると、酷暑での開催の問題などもあるが、高校生たちの全力プレーや、応援席に響くブラスバンドの音に心を奪われる。選手たちの汗や涙の物語は、こちらの日常を一瞬忘れさせてくれる。

 しかし、私にとってさらに興味深いのは「自分がどこの高校を応援するか」問題である。

 自分は大学卒業まで奈良で育った。それ以降は基本的にはほとんど東京暮らしである。なのに、東京代表と大阪代表が試合をすれば、だいたい大阪の高校を応援してしまう。出身地の奈良やなじみの深い京都の高校であれば、無条件で応援する。

 これは、単なる習慣や偶然ではない。心理学の言葉で言えば「内集団びいき」である。人間は、自分が帰属意識を抱く集団を理由なく特別扱いし、応援したくなる。

 私のアイデンティティは(おそらく)いまだに関西人であるためか、関西のチームが勝てばうれしく、負ければちょっと悔しい。選手たちとはなんのつながりもないのに、心は動く。

 今の若い世代では、大分、野球離れが進んでいるだろうから、ちょっとピンと来ないかもしれないが、ある年代以上の人々にとって、甲子園は、人間の本能をあぶり出す舞台でもある。

高校野球では無害だが、採用や昇進では面倒になる

 甲子園における内集団びいきは無害だ。むしろ「郷土愛」の表現として肯定的に見られる。地元代表を応援する気持ちは誰にでもあるし、地域も個人も盛り上がる。だが、この心理が企業に持ち込まれると事態は変わる。

 たとえば採用の面接で、人事担当者が「自分と同じ大学の出身だ」と親近感を持ち、その候補者を高く評価する。あるいは昇進の場で「高校の後輩だから昇進させてあげたい」とひいきする。これは表には出にくいが、組織の中で確かに起こっている。