東海林(津田健次郎)静かに再登場、“どういて問答”が再び胸に刺さる【あんぱん第119回】『あんぱん』第119回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第119回(2025年9月11日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「やっと見つけたにゃ」東海林が訪ねてきたわけは

 あるとき、のぶ(今田美桜)のマンションに、東海林(津田健次郎)が訪ねてきた。

 高知新報の編集長で、のぶと嵩(北村匠海)の上司だった東海林。いまは退職して、ヒマを持て余しているので、遊びに来たという。昭和40年代の定年は55歳だった。早い!

 第118回では、健太郎(高橋文哉)ももうすぐ定年と言っていた。とすると東海林は何歳なのか。
60代ではあるだろう。だからなのか、表情も体形もずいぶん老いた印象だ。

 高知新報時代はかなり覇気のある人物だった彼が、極端に元気がなくなっていて、老いただけなのか体の調子が悪いのか判断がつきかねる。

 のぶの茶室に通されてお茶を飲むとき、ずいぶん大儀そうで、心配になった。

 東海林は嵩がこんなに立派になるとは想像していなくて、むしろのぶが政治家にでもなって成功すると思っていたと笑う。

「あいつの夢をふたりで追いかけて ふたりで捕まえたがや」

 そう言われて、のぶはちょっと嬉しそうにはにかむ。

 嵩の仕事をしっかり追いかけていて『千夜一夜物語』『チリンのすず』『やさしいライオン』とそれぞれ適切に嵩の創作意図を汲む。だが、ひとつだけ腑に落ちない作品があるという。

『アンパンマン』だ。

 どういて悪もんを倒さんがな、どういてかっこよう空を飛ばん……、とのぶに問いかける。

「どういて柳井はあれを書いたがな?」

 東海林の問いに、のぶは子どもたちになんべんも読みきかせをするうちに感じたことを語る。

「やっと見つけたにゃ」と東海林は微笑む。

 なぜ東海林は「どういて」「どういて」と問いかけていたのか。その理由は。