あの“第1話”が帰ってきた…なぜ今、冒頭シーンを“再撮”したのか【あんぱん第120回】『あんぱん』第120回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第120回(2025年9月12日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

東海林(津田健次郎)が亡くなった

 トピックスがぎゅうぎゅうの回だった。

◯東海林(津田健次郎)の死
◯琴子(鳴海唯)の結婚相手
◯アンパンマンからあんぱんまんの誕生
◯新キャラ・中尾星子登場

 まずは東海林のこと。

 東海林がふいに訪ねて来てからしばらくして、また懐かしい人が。

 琴子(鳴海唯)から速達が届いた。それは東海林が亡くなったという知らせだった。

 第119回、東海林が妙に覇気がなく、無理している感じだったのは病気を患っていたのだ。津田健次郎の弱った人間の再現力には感服する。単なる老いの動作ではなかった。

 無理を押して東京にのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)に会いに来たのだ。そしてふたりが「逆転しない正義」を見つけたことを喜んで亡くなっていった。

 中園ミホはこう語っている。

「東海林がのぶと嵩の面接のシーンで、正義は逆転する話をそれぞれから聞いたとき、津田健次郎さんの目が潤んでいたんです。4Kで見るとはっきりわかります。それを見て、そうか、東海林もそういう思いを味わったのだろうと感じました。それがきっかけで、2人を見守っていく人物にしようと、私のなかで東海林のイメージが変わっていきました」

 津田もジャーナリストとして戦争について思うところがあり、のぶと嵩に共感し、遠く離れていてもふたりが大切なものを見つけたかどうか気になっていたのだろう。

 亡くなる前に、次代に希望があることを感じ、安心して亡くなったことだろう。

 琴子は高知でずっと東海林とおつきあいがあったのかもしれない。なにしろ同僚の岩清水(倉悠貴)と結婚していたから。

 いやあ、びっくり。岩清水のことは結婚相手として眼中になさそうだったのに。