安倍相場で初の大幅な調整局面に投資家もリスク回避に動く?
Photo by Masaki Nakamura

 グレートローテーション──。景気回復期待の高まりを背景に、安全性の高い債券からリスクの大きい株へ、投資マネーが大移動を始めるという意味で、昨年末から頻繁に使われるようになった言葉だ。

 5月の大型連休後、日経平均株価が軽々と1万5000円を突破し、日本の長期金利がじりじりと上昇(国債の価格が低下)し始めたときにも、「グレートローテーションの一環だ」というもっともらしい解説が、新聞紙面などをにぎわせた。

 5月23日に株価が急落して以降、長期金利が徐々に低下(国債の価格が上昇)しているのも、そうした資金の大きな流れを基にして説明できそうだが、はたして本当にそうなのだろうか。

 実際のところ、国債の30%(288兆円、昨年末時点)を保有し、最大勢力となる銀行勢の動きを見れば、そうした解説が的を射ていないことがよくわかる。

 日本銀行が未曽有の金融緩和策を打ち出して以降、銀行は貴重な収益源として、それまでに大量に購入してきた国債を、手放す方向へ大きくかじを切った。

 日銀が緩和策を通じて、緩やかなインフレ(物価の上昇)を目指す中では、長期金利が引きずられるようにして上昇(国債の価格が低下)するため、国債の売買益を捻出しにくくなり、最悪の場合は国債の時価が購入価格を下回り、含み損を抱えるリスクが大きくなるためだ。

 直近2週間の平均株価の下落幅に対して、金利の低下幅が比較的小さいのも、銀行勢が国債を「売り目線」でしかほぼ見なくなっていることの一つの表れといえる。

 では、国債を市場で売却して得た資金を、銀行はどこに振り向けているのか。

 それは株でもなければ、ほかの債券でもない。日銀の当座預金口座にその大半を寝かせているのだ。いわゆるブタ積みである。