フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

フロントに大きな「VW」の丸いロゴ、まん丸のライト……フォルクスワーゲンの「Type2(ワーゲンバス)」は、キッチンカーやコーヒーカーなどとして日本でもよく使われている、かわいらしいバンです。そのワーゲンバスを電気自動車にして復活させたのが、日本でも6月から販売が始まった「ID.Buzz」。Type2のポップでかわいらしいデザインを継承しているのですが、トレードマークの丸目ではなく、ライトはキリッと切れ長のデザインになりました。丸目ではない理由と、個人ユーザーに人気なのになぜ商用車ブランドで製造・販売しているのか、そのあたりを聞きました。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)

日産キャラバンを中古で買いました

 みなさまごきげんよう。
 フェルディナント・ヤマグチでございます。
 今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。

 宮崎のサーフィン用に、新潟の中古車店で買った日産NV350キャラバン。フェリーで宮崎に運んできました。

東京から神戸のフェリーターミナルまで550キロ。今回は渋滞もなくサクッと来られました。ここまでの燃費はオンボードで1リットルあたり11.6キロでした東京から神戸のフェリーターミナルまで550キロ。今回は渋滞もなくサクッと来られました。ここまでの燃費はオンボードで1リットルあたり11.6キロでした Photo by Ferdinand Yamaguchi

 バイクを積んでいたので「窓を開けておいた方がいいですよね?」と聞くと「いえ、閉めたままで大丈夫です」と。何年か前に横須賀―門司間のフェリーにハイエースにバイクを積んで乗ったときに、洋上で携帯に電話がかかってきて「すぐにクルマに戻ってください!」と呼び出された経験があるのです。「車内に揮発ガスが充満して爆発の危険がありますから、バイクを積んでいる場合は必ず窓を開けてください」と。その説明をすると、「いえ。ウチの船にそうした規則はありません」と。船会社によって、安全基準も違うものなんですな。

去年買ったKTMのEXC250は、宮崎で乗ることにしました去年買ったKTMのEXC250は、宮崎で乗ることにしました Photo by F.Y.
美しい神戸港の夜景美しい神戸港の夜景 Photo by F.Y.

 このフェリーは19:10に神戸を出港し、翌朝08:40に宮崎に到着します。乗船してひと風呂浴びて食事を済ませ軽く飲んでそのままバタン。目が覚めれば宮崎に着いている、という流れ。極めて時間効率がよろしい。

船から見る朝焼けがまたよろし船から見る朝焼けがまたよろし Photo by F.Y.

 宮崎フェル宅は、宮崎港からクルマでわずか3分。バイクを下ろしてルンバを回して波乗りの支度をして、10時過ぎには海に入ることができました。キャラバン、これから宮崎で使い倒そうと思います。

バイクを下ろして早速波乗りの準備。ぼちぼち林道の開拓もしていきましょうバイクを下ろして早速波乗りの準備。ぼちぼち林道の開拓もしていきましょう Photo by F.Y.

 ということで本編へとまいりましょう。

 現代版フォルクスワーゲンType2。「ID. Buzz」のインポーターインタビューです。

名車「Type 2」(ワーゲンバス)をEVでよみがえらせた「ID.Buzz」

 1950年に誕生したフォルクスワーゲンType 2、通称“ワーゲンバス”のDNAを受け継ぎ、完全電気駆動でよみがえらせたのが「ID.Buzz」だ。ヨーロッパでは2022年から量産されているが、日本での販売は今年の6月に始まったばかりである。今回はインポーターインタビューということで、フォルクスワーゲングループ ジャパンの沢村武史さんにお話を聞いていく。

フォルクスワーゲンのEVバン「ID.Buzz」フォルクスワーゲンのEVバン「ID.Buzz」

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):1000キロほど走ってみて、ID. Buzzがとても良いクルマであることを実感しました。静かで快適で、運転のストレスも少ない。EVとしての完成度は非常に高いと思います。ただ、ちょっと惜しいなと思った部分があります。往年のフォルクスワーゲン Type2を思わせながら、どうして“丸目”にしなかったのでしょう?単体で見ると「復活した」と思うデザインなのに、Type2と並べて見ると実は全く似ていない。丸目にしたらよりウケたと思うのですが、なぜそうしなかったのか。

フォルクスワーゲン グループ ジャパン ビジネスオペレーション本部 プロダクト・マネジメント課 シニアマネージャー 沢村武史さん(以下、沢):確かにそれは多くの方が口にされる疑問です。「可愛いけれど、どうして丸目じゃないのか」という声は、展示会でも販売現場でも必ず出てきます。実際、LEDライトを使えば丸目風の意匠を再現することは難しくありません。だからこそ、「なぜやらなかったのか」という疑問はとても自然なものだと思います。

 この判断を理解するためには、ID. Buzzが企画された背景を少し振り返る必要があります。ID. Buzzがコンセプトカーとして登場したのは2017年。当時は、フォルクスワーゲンの新しい電気自動車ファミリーがちょうどこれから世に出るというタイミングでした。

F:ディーゼルゲート事件が2015年だから、その信頼回復を進めていた時期でもありますよね。最初のEVはゴルフでしたっけ?

※ディーゼルゲート事件…2015年に発覚した排ガス不正問題。フォルクスワーゲンはディーゼル車に違法ソフトウェアを搭載し、検査時のみ排ガス規制をクリアする仕組みを導入。実際の走行時は基準値を大幅に超える有害物質を排出していた。これによりヨーロッパの自動車メーカー各社は当時注力していたクリーンディーゼル技術からシフトし、一斉にEV化を進めることになった。