電気自動車専用プラットフォーム採用「IDファミリー」の一員

沢:最初の量産EVはe-up!ですね。次にe-ゴルフ。ですが、いずれも既存車種をベースにした派生型で、完全なオリジナルEVではありませんでした。もともとICEを前提とした車台設計ですから、EVベストマッチではありません。そこで新たに導入されたのがMEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブ・マトリックス、Modularer E-Antriebs-Baukasten)です。これはゼロから設計された、電気自動車専用のプラットフォームで、床下にバッテリーを敷き詰めてキャビンを最大限広く取り、前後モーターを柔軟に組み合わせられる構造です。
F:MEBプラットフォームは、EV時代の基本のキとなるプラットフォームであると。なるほど。
沢:このMEBを採用した最初のモデルがID.3。続いてID.4。EVの3本目の柱として企画されたのが、今回フェルさんに乗っていただいたID. Buzzです。ID. Buzzは最初から「IDファミリーの一員」として登場することが前提であり、ファミリー全体に共通するアイデンティティを表現する必要があった、ということです。
F:なるほど。ID. Buzzは「単なる復刻モデル」ではなく、「新しいEVファミリーの仲間入り」という使命を持っていたということですね。
沢:その通りです。デザイナーと直接話をしたことがないので、以下、デザインについてはあくまでも私の見立てと思って話を聞いてほしいのですが……もしID. BuzzだけがType 2そっくりの丸目デザインで登場していたら、シリーズ全体の統一感が崩れてしまいますよね。IDシリーズは、フォルクスワーゲンが「これからのEV群はこの顔でいく」という意思表示でもあります。
「ID. Buzzはなぜ丸目じゃないの?」と問われれば、「100%レトロな、本気の懐古趣味なクルマではないから」ということなんじゃないかと。

F:うーむ。理屈は分かるのですが、それでも丸目が良いなぁ……。その方が絶対客にもウケるのに。