「株価チャートのクイズに答えるだけで株のセンスが身につく」――そんなユニークなスタイルで人気を集めているのが『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』です。発売以来、個人投資家の間で評判となり、多くの読者から高評価が寄せられています。著者は、ファンドマネジャーとして2000億円超を運用した経験を持つ楽天証券の窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から本書のポイントをお伝えします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

含み益と含み損、どちらの株を売る?
多くの個人投資家が直面する、典型的な悩みを考えてみましょう。
もし今すぐ現金が必要になったとして、次のうち、どちらの株を売却しますか?
・含み益10%の銘柄
・含み損10%の銘柄
こんな時に、多くの個人投資家が、利益が出ている銘柄を先に売り、含み損の銘柄を持ち続けてしまいます。
この行動こそが、株で失敗する典型的なパターンだと窪田さんは強調しています。
なぜなら、パフォーマンスの良い銘柄を手放し、悪い銘柄を抱え続けることになるからです。
私たちは「利益を失うことへの恐怖」と、「いつか株価が戻るはずだ」という淡い希望、この2つの感情によって非合理的な行動をしてしまいがちです。
その結果、気づいた時には、パフォーマンスの悪い銘柄ばかり抱えた「不調な銘柄の寄せ集め」のようなポートフォリオになってしまいます。
チャートは「群衆の知恵」
チャートを使って投資する場合、重要なのは「そろそろ下がるだろう」「いつか戻るだろう」といった未来予測ではなく、今、目の前で起きているトレンドに乗ることです。
窪田さんは、チャートとは「群衆の知恵」だと述べています。チャートは未来を占う水晶玉ではなく、市場に参加する人々の、集合的な心理や行動を映し出す鏡なのです。
この「チャートは群衆の知恵である」という考え方を理解するために、窪田さんは、チャートを「戦場」にたとえて説明します。
株価は「買い」と「売り」の両軍がぶつかり合う最前線。そして、売買高は戦場で戦う兵士の数にあたります。
想像してみてください。
もし兵士が数人しかいない中での小さな勝利であれば、それは大勢に影響しない単なる小競り合いかもしれません。
しかし、もし莫大な数の兵士、つまり大きな売買高を伴って株価が上昇しているなら、それは全軍の進撃と判断できるので、「このトレンドは本物だろう」と見極めることができるのです。
投資で勝つために一番大切な「損切り」の規律
この「群衆の知恵」は、暴落への対処法も示しています。
もしあなたが階段を上っている時に、大勢の人がパニックになって階段を駆け下りてきたら、理由を分析している暇はありません。とにかく、自分も一緒に逃げなければ危険だと判断できます。
そして、この考え方こそが、チャートを使ったトレードで最も重要なスキルにつながります。
初心者と上級者の大きな違いは、うまくいっている時ではなく、自分の判断が間違っていた時にどう対処するかです。
チャートの使い方に長けた人は、百発百中の完璧なトレードを狙っているわけではありません。
彼らが本当に重要視しているのは、自分の判断と反対に株価が動いた時に、感情を挟まずに、躊躇なく損切りすることです。
この行動こそが、投資の成果を左右します。
たとえば、勝率が7割だとしても、残りの3割の負けで大きな損失を出していたら、資産は増えません。小さな負けを素早く確定させ、勝ちを大きく伸ばすことで、トータルで資産を増やしていくことができるのです。