関西電力はOpenAIと連携して何をするつもりなのか?関西電力 理事 / IT戦略室長 上田晃穂氏 Photo by Mayumi Sakai

関西電力は2025年6月、OpenAIとの戦略的連携を発表した。「ChatGPT Enterprise」を社内で大規模導入し、「AIファースト企業」への転換を目指す。電力会社といえば、日本の伝統的なインフラ企業であり、動きが遅いイメージがあるが、OpenAIとの連携は初対面から数日で決定したという。異例のスピード展開の理由を、関西電力のキーパーソンに聞いた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

「電力会社は安泰」は、もう幻想

「電力会社は盤石で、びくともせえへんちゃうかと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。社内にはかなりの危機感がある」

 関西電力の理事でIT戦略室長の上田晃穂氏は、こう語る。一昔前は「電力会社に就職すれば一生安泰」などと言われたものだが、電力自由化、脱炭素化、仮想発電所(VPP)をはじめとする分散化など、変化の波が押し寄せている。

 電力自由化で、関西地域以外の顧客獲得と電力事業以外の事業展開は急務。さらに人口減少で毎年90万人減るとあっては、労働力はもちろん電力需要も縮小する。「毎年、政令指定都市2つ分近く(の人口)が消えていくと考えると、怖いでしょう」(上田氏)

 関西電力は2018年6月にDX戦略委員会を設立。8月にはアクセンチュアとの合弁で、K4 Digitalを立ち上げた。社名の「K4」は黒部川第四発電所に由来し、戦後復興期のパイオニア精神をデジタル時代に継承する意味を込めた。

 以降、関西電力はAIとロボットを組み合わせた現場業務の自動化を推進してきた。火力発電所の巡視点検ロボットや煙突点検ドローンなど、具体的な成果も上がっている。