ドイツ自動車大手メルセデス・ベンツグループのオラ・ケレニウス最高経営責任者(CEO)は2月、プロトタイプのスポーツカーに試乗した際、そのごう音を聞いて喜んだ。「当社史上最高のV8かもしれない」と同氏は声を上げた。それは電気自動車(EV)だった。音は同社の名高いAMG製8気筒エンジンからではなく、ヘッドライトに組み込まれたスピーカーから発せられていた。EVはかつて、交通騒音を低減すると期待されていた。しかし今では、都市の音の風景に新たな不協和音をもたらしている。スポーツカーメーカーは、顧客がよく知り愛してやまない大排気量エンジンと同じくらい騒々しくなるよう設計されたEVを投入している。これらの自動車メーカーは、エンジンのうなりやごう音が、自社のアイデンティティーと魅力の中核を成していると述べている。