スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。今回は、訳者の栗木さつき氏に集中力を高める具体的なノウハウについて話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「締め切り」の力は偉大
――本書では集中力を高めるためのさまざまなノウハウが出てきました。栗木さんとしては意識されていることはありますか?
栗木さつき氏(以下、栗木):私自身、試行錯誤していますが、何かのアクションをしたほうが逆に集中できるのかもしれないとも思います。たとえば、歩いたり走ったり、何か運動をするとか。
それ以外では、私にとっては、何よりも「締め切り」があるというのがいちばんです。締め切りがなかったら集中できません。締め切り直前になると、本当に集中しますね。ですから自分の中でも、「今日はここまで訳そう」とノルマを考えています。また、自分で前倒しして、ここまでにやらなきゃと決めたりもしています。
本書の著者は、「1日にすること」を毎朝書きなさいと言っています。
毎朝、仕事を始める前にほんの3~5分でかまわないから、今日すべき仕事の予定を立てよう。
そうすれば、仕事に追われて1日を受け身の対応ですごすのではなく、先を見越して行動を起こし、積極的に1日の仕事を進められるようになる。――『一点集中術』より
そうすれば、仕事に追われて1日を受け身の対応ですごすのではなく、先を見越して行動を起こし、積極的に1日の仕事を進められるようになる。――『一点集中術』より
栗木:締め切りやノルマでも、朝の予定リストでも、共通しているのは「自分で1日の流れをコントロールすること」。それが集中を生むのだと思います。
コレをしないから「だらだら仕事」になる
――「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則(パーキンソンの法則)を聞いたことがありますが、時間が際限なくあると思ってしまうと、なかなか一つのことに集中できません。
栗木:はい。余裕のある仕事でも、自分で締め切りを切るなりして取り組んだほうが、生産性が上がると思います。本書にはこう書かれています。
あなたは自分の選択に100パーセントの責任をもち、最後までやりとげなければならない。
目の前の作業に没頭するのだ。
シングルタスクをするには、いまという瞬間、ほかの要求にいっさい応じることなく、1つの作業だけに取り組むことが求められる。次の作業に着手できるのは、いま取り組んでいる作業を終えてからだ。――『一点集中術』より
目の前の作業に没頭するのだ。
シングルタスクをするには、いまという瞬間、ほかの要求にいっさい応じることなく、1つの作業だけに取り組むことが求められる。次の作業に着手できるのは、いま取り組んでいる作業を終えてからだ。――『一点集中術』より
栗木:私自身、複数のことを同時にこなそうとするとかえって散漫になります。いま取り組んでいる作業に集中して、それを終えてから次に進むというその積み重ねが、結局はいちばん効率的です。
また、私のような自宅で働いている人の場合、日常と仕事が地続きになりやすく、区切りがないといつまでも働いてしまいます。「ここまでやったら次は明日」「ここまでやったら走りに行こう」など、自分で区切りを決めて、意識的に1日をコントロールすることが、集中力を高める知恵です。
逆に言うと、締め切りを切らずに働いていると、集中力が上がらないまま、「なんとなく忙しい」という状態がいつまでもだらだらと続いてしまうことになります。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)