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「ガストの店長、年収最大1000万円に」――すかいらーくホールディングスが打ち出した新人事制度は、「低賃金・長時間労働・人手不足」が構造的課題になっていた外食業界に衝撃を与えました。
固定費や変動費の重さゆえに利益率が低く、人件費抑制が常識とされる外食産業で、なぜ、同社は大胆に店長報酬を引き上げられたのでしょうか。その“カラクリ”を財務データと経営戦略から探っていきます。(グロービス経営大学院教員 太田昂志)
ファミレス店長が年収最大1000万円
「異例の高年収」を支える原資はどこから?
すかいらーくホールディングス(以下すかいらーく)はなぜ、業界では異例の高年収を実現できるのか。
その背景について、まずは財務データから詳しくひも解いていきましょう。
まず、売り上げと利益です。すかいらーくはブランド別(ガスト、バーミヤン、ジョナサンなど)の損益を公表していませんが、全社的な収益構造を追えば、この”カラクリ”を読み解く手がかりが見えてきます。
売上高は、2022年の約3037億円から、2023年には3548億円へと約16.8%増、さらに2024年には4011億円と13.0%増の伸びを示しています。すかいらーくはこの増収要因を、既存店の売り上げ増加やメニュー刷新・プロモーション効果などと説明しています。
利益面も見てみましょう。
営業利益も、2022年は56億円の赤字でしたが、2023年には117億円(営業利益率3.3%)と黒字転換、2024年には242億円(同6.0%)と2年で大幅に改善しています。値上げの効果に加え、食材ロス削減や部門横断の原価低減プロジェクトなどが奏功したといいます。
こうした取り組みの背景にあったのは、「損益分岐点を引き下げる」努力だったと考えます。







