米企業、「H-1Bビザ手数料10万ドル」で大パニックPhoto:Eric Thayer/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領が就労ビザ「H-1B」の変更を発表し、大混乱に陥ったのを受けて、ホワイトハウスはパニック状態のハイテク企業幹部らを落ち着かせようと奔走した。

 トランプ政権が米東部時間21日午前0時1分から、H-1Bビザの申請に年間10万ドル(約1480万円)の新たな手数料を課すという19日の発表は、企業や従業員らの不意を突き、不安と混乱の波を引き起こした。その時刻以降に米国に戻ろうとする既存のH-1Bビザ保有者はこの手数料を支払わなくてはならなくなるのではないかと多くの人が懸念した。

 アマゾン・ドット・コムやアルファベット傘下のグーグル、マイクロソフトなどはH-1Bビザを保有する従業員に対し、米国を離れないよう警告するとともに、同ビザ保有者で海外にいる従業員には、再入国が困難になる恐れがあるとして20日に米国に戻るよう求めた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した従業員宛てメモや、それらの内容をよく知る複数の人物の話で明らかになった。各社は、多くの従業員がこのビザを使用していることから、巨額の手数料の支払い負担が生じる可能性があると懸念している。

 人事担当者らは、従業員のリストを分担し、必要な場合には従業員が航空便を予約するのを手助けできるよう、彼らの所在確認に努めた。一方、移民弁護士は企業やビザ保有者に文書を送付し、懸念に対応しようとしたが、解決策をほとんど持ち合わせていないことが多かった。

 混乱の拡大を抑えるため、ホワイトハウスは20日、方針変更は新規ビザの取得にのみ適用され、更新や、既存のビザ保有者、2025年のくじ引きによる当選者は対象ではないと説明した。また、新たな方針は既存のビザ保有者の出入国には影響せず、10万ドルは年間手数料ではなく一度限りの費用だと付け加えた。

 それでも一部の労働者は米国外に出ることに不安をなお抱えており、この先何が起きるのかも見通せないと語った。ある労働者は、自身のH-1Bビザが有効になるのは数週間先だと明かした。ホワイトハウスが細部の説明のために示した指針でひとまずある程度の安心感は得られたものの、この労働者はインドにいる家族を訪ねるために渡航するリスクは負えないと述べた。彼の母親は心臓病を抱え、緊急事態が起きれば、長年かけて築いたキャリアと家族のそばにいることのどちらかを選ばざるを得なくなるのではないかと恐れているという。