
フランス・パリに住み始めて一年になるライターの冨田ユウリさん。レストランや家庭料理、前菜からメイン料理、デザートにまで登場するようになった、フランスで人気の意外な「日本の食べ物」とは?(ライター 冨田ユウリ)
フランス在住の私に
日本の友人がくれるもの
日本の友人が「フランスに住んでいたら恋しいだろうから」と、こぞってお土産にくれるものがある。出汁(だし)パックだ。軽くて持ち運びやすく、さらに賞味期限も比較的長いため、日本からのお土産として選ばれる確率が高いのだろう。
ありがたいことに、フランスだとは思えないほど、むしろ日本にいたとき以上に我が家の台所は出汁パックであふれ、棚一つを軽く占領している。
フランス料理といえば、バターやクリームをたっぷり使った濃厚なイメージ。だからこそ、「フランスでは和の繊細な味が恋しくなるはずだ」と心配する日本人が多いのだろう。私も移住する前はそう思い、出汁パックを大量にスーツケースに詰めてきた。ゆえに頂き物と合わせて、今我が家には365日毎日飲んでも消費しきれないほどの出汁パックがある。
健康志向の高まりで
肉や乳製品を控える食事が普及
けれど実際にフランスの街を歩いてみると、そうした多くの日本人がイメージする“重たい”フレンチをあまり目にしない。クラシックな昔ながらのビストロやレストランには、今でも濃厚なソースをメインとした伝統的な料理が並ぶ。パティスリーには、バターたっぷりのクロワッサンや濃厚なクリームを使用したケーキの数々。
だが、健康志向の高まりなどから、最近のレストランや家庭料理などでは、バターなどの乳製品や動物性のものを控える動きが見られる。パティスリーも、低GIを意識した店などが増えている。
近年、フランスにおいて健康面と環境面の理由で広がりつつあるのが、肉や乳製品を控える“プラントベース”の食生活。一般のレストランでも選択肢として用意されている店は多く、また、学校給食にもその流れは及んでいる。
バター、クリーム、肉類を減らして
おいしさを出すにはどうすればいいのか
2024年3月、フランス政府は、小中学校などの公共給食施設において、週に少なくとも1回のプラントベースでの提供を義務化する法案を可決。
フランスにおけるすべての公的給食サービスが対象で、野菜、穀物、豆類、乳製品などを中心に構成されたメニューを週1回以上設定することが義務となり、肉や魚など動物性たんぱく質の摂取量を抑制することを目的としている。
しかし、動物性のものや乳製品を控える食事で課題となるのが、“満足感”だ。
フレンチの定番であるバターやクリーム、肉類を減らしても、おいしさを出すにはどうするか。バターをたっぷり使ったクロワッサンや、クリームをふんだんに入れたソースに対して、幸せを感じてきたフランス人にとっては大きな課題である。
この課題を解決できるとフランス人たちの間で支持されているのが、日本の「あるもの」なのだ。