二つ目は、「信頼」をもとにした人間関係をつくれないことです。

 親は保育園・幼稚園を信頼して、子どもを預けます。その信頼に応えて、園は子どもの面倒を見、教育を通して健全な成長を促します。園と保護者の間にそういう信頼関係があるから、子どもたちは親の目の届かないところで少しずつ成長できるのです。

 ふだんは気づきにくいでしょうけど、ふとしたときに、「園に行くようになって、ずいぶんしっかりしてきたなあ」と感じるのではないかと思います。

 あるいは親は子を信頼して、園に送り出します。子どもは子どもなりに「自分は親から信頼されている」と感じるはずです。

 もちろん子どもですから、具体的に信頼を意識することはありませんが、知らないうちに確実に「信頼の経験値」が上がります。

 ビデオカメラがないからこそ、親と子と園の間に「信頼の循環」ができるのです。

社員を「監視」するような会社は伸びない

 同じことが、大人の社会にも当てはまります。

 たとえば社長が、オフィスじゅうにビデオカメラを設置し、社員たちの仕事ぶりを逐一モニターしている、なんてケースがあります。

 社長は社員を監視することが最優先の仕事になり、片時も目を離せなくなるでしょう。当然、「高所大局から会社を取り巻く状況を見て、ビジネスの方向性を判断・決定・実行していく」という社長本来の仕事がおろそかになります。

 社員のほうは「社長が見ているから、怠けられない」と、仕事にまじめに取り組むかもしれません。

 けれども一方で、常に緊張を強いられるため、いらないストレスをいっぱいため込む心配があります。

 結果的に、一人ひとりのパフォーマンスは下がりこそすれ、上がることはないのではないでしょうか。

 もとより社員を律することは、社長の仕事ではありません。社員がそれぞれ、自分で自分を律して仕事に励むことが重要。監視は不要です。

 またSNSは、一歩間違えると、互いを監視することになりかねません。