
英単語暗記は、何度も繰り返し覚えるという人が多いですが、難点はなかなか記憶が定着しないこと。実は、記憶を定着させるには「ひたすら繰り返す」よりも、「情報をどのように加工するか」が決定的に重要だ。本稿では、日本記憶力選手権大会で6回優勝した経験を持つ、池田義博氏の動画「50歳でも記憶力はアップ! 加齢に勝てる脳トレ法」から、認知心理学に基づく2つの記憶戦略、「維持リハーサル」と「精緻化」の核心部分を特別に公開する。
短期記憶に最適な「維持リハーサル」
記憶を強化する方法は数多くありますが、認知心理学における基本的な方策は2つに絞られます。ひとつは「維持リハーサル」、もうひとつが「精緻化」です。ここではまず、維持リハーサルから紹介しましょう。
維持リハーサルとは、情報を繰り返し唱えたり思い出したりすることで、一時的に記憶にとどめる方法です。電話番号を口ずさみながら覚える、買い物リストを頭の中で反復する、といった行為がその典型です。
この方法は主に短期記憶を支えるもので、長期記憶へ定着させるには膨大な繰り返しと復習が必要になります。そのため効率性の点では限界もありますが、学習の初期段階や短期的に情報を保持したいときには大いに役立ちます。

たとえば英語のリスニング試験では、聞いた内容を短時間だけ保持して選択肢を選ぶ必要があります。その場でフレーズを頭の中で繰り返すことで、記憶の持続時間を延ばすことができます。また英単語や定義を覚え始めた段階では、声に出して繰り返すことで言葉の音やリズムに慣れ、記憶にとどまりやすくなります。
効果を高めるにはタイミングも重要です。学習直後、10分後、1時間後、翌日、1週間後といった間隔で繰り返すことで記憶の定着が進みます。さらに音読と書き取りを組み合わせるなど、視覚・聴覚・運動感覚を同時に使うことで記憶は一層安定します。
維持リハーサルは、単なる「復習」とは異なります。復習が意味を考えながら繰り返す作業であるのに対し、維持リハーサルは情報そのものに意味づけせずに反復する点に特徴があります。したがって長期定着には不向きですが、使いどころを誤らなければ学習を支える有効なツールとなります。