「禁じ手」を国際機関が批判
上場企業の4割、日銀が大株主

 中央銀行が、多くの上場会社の事実上の大株主になっている状況は健全ではない。企業の経営判断がゆがめられる危険がある。また、国債なら満期になれば償還されるが、ETFは売却しない限り、いつまでも残る。

 こうしたことから、ETFの購入は「禁じ手」とされ、事実、日銀のETF購入は、国際的機関からも批判されてきた。

 OECDは対日審査報告の中で、日銀のETF購入について批判的な評価をしている(OECD Economic Surveys: Japan、April, 2019, p.36)。やや長くなるが、引用しよう。

「現在、日銀はETF市場の4分の3以上を保有しており、間接的に日本の上場企業の40%において、10大株主の一角を占める存在となっている。中央銀行によるETFの購入は、一部の株式の過大評価につながる可能性がある。

 さらに、日銀のこのプログラムは、市場の規律を損なっている。なぜなら、企業が新たな経営戦略を打ち出したり配当を増やしたりすることではなく、主要な株価指数に含まれているという理由だけで報われる仕組みになっているためである」

「また、こうした大規模な購入は、将来、日銀が保有資産を売却する際に大きな困難を伴うことになる」

 IMFも20年2月の「Japan: Selected Issues」(IMF Country Report No. 20/40)で、日銀によるETF購入政策について以下のように評価している。

「日本銀行によるETFその他の資産の購入は、市場価格形成や資源配分のゆがみを引き起こす可能性がある。これらの購入は、日銀のバランスシートに与える影響や、将来的な出口戦略における課題について懸念を生じさせる」

年間売却額が少ないので
株価下落の懸念は少ない!?

 日銀による今回のETFの売却決定は、株価にどのような影響を与えたか?

 それまで日経平均株価は、連日最高値を更新して4万5000円程度に到達していた。

 日銀の金融政策決定会合が開かれた9月19日も、午前は取引時間中の最高値を更新した。

 だが日銀の決定を受けて一時、前日終値より800円以上値下がりした。しかし、その後回復。週明け月曜日の22日には、再び4万5000円台になった。

 つまり、売却決定は株価を下落させることはなかった。

 こうなったのは、売却のスピードが極めて緩やかだからだろう。その意味では日銀の狙い通りといえるだろう。

 だが簿価ベースで年3300億円程度ずつ売却していくとなると、植田総裁も認めたように保有ETFを全部売り切るまでに112年もかかる。また年50億円程度のペースで売却を進めるという不動産投資信託(REIT)は、売り切るまでに131年を要する。