
スタンフォードの幼稚園で見た光景は衝撃的でした。日本の教育が大切にしてきた基本中の基本が、いかに尊いものであるかを気付かせてくれたからです。日本ならではの「強み」とは何でしょうか。(日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool創立者 中内玲子)
米シリコンバレー・スタンフォードの
幼稚園で見た光景と「違和感」
世界中の頭脳が集まり、イノベーションが生まれる聖地、米シリコンバレー。その中核をなすスタンフォード大学は、まさに知のフロンティアです。
実は、同大学の敷地内にあるプリスクール(幼稚園)も、幼児教育の分野で世界的に有名です。ここは、子どもたちの心理学研究の場としても活用されており、その教育アプローチは「子どもの自主性と創造性を最大限に引き出す」ことを目的にしています。念願叶ってこのプリスクールへの訪問視察が決まった時、「どれほど革新的な教育が繰り広げられているのだろう」と私の胸は高鳴りました。
そして実際に足を踏み入れると、そこはまさに「創造性の楽園」でした。園庭にはリサイクル素材の遊具が置かれ、子どもたちが自由自在に何かを組み立てて遊んでいます。教室内では、自分の興味が向いた場所がそのままアトリエとなり、粘土で思い思いに創作し、真剣な眼差しで没頭しています。
先生たちは、子どもたちの活動をじっと見守り、決して指示や命令をしません。「こうしなさい」ではなく、「どうしてそう思ったの?」と問いかけ、子どもたちの思考を深める手助けをしています。
知識を教え込むのではなく、子ども自身が持つ「知りたい」「やってみたい」という内発的な動機を何よりも尊重する。その徹底した姿勢に、私は感銘を受けました。
ところが、その素晴らしい光景を眺めているうちに、ちょっとした違和感を覚え始めました。しばらくして、その違和感の正体に気づき、衝撃を受けたのです。