
日本の運動会とイギリスのスポーツデイとの比較を通して、日本の「みんな一緒教育」が抱える課題を考えます。未来を担う子どもたちに「本当の必要な力」は、どのように育てればいいのでしょうか。(日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool創立者 中内玲子)
イギリスの運動会で
日本人ママ友が漏らしたひとこと
「日本の運動会と比べて、いかがですか?」
イギリスのボーディングスクールに通う次男の「スポーツデイ」(日本で言うところの運動会にあたるもの)に参加した時のことです。この光景にはもう慣れていますが、隣の席にいた日本人のママ友に、日本の運動会との違いについて尋ねてみました。
すると彼女は「全然違いますね!」と驚いた表情。プログラムを見ながら「うちの子、こんなに何度も競技に出るみたいで……」と、少し戸惑った様子でした。
その日本人ママ友の反応で、私は日本とイギリスの教育文化の違いについて改めて考えさせられました。スポーツデイでは、各種目のレースが終わるたびに、1位、2位、3位の子が表彰台に立ち、メダルを授与されます。そのため運動が得意な子は、1日の終わりには何個ものメダルを首から下げ、ヒーローのように喝采を浴びるのです。
その一方で、予選で敗退した子どもたちは、観客席から応援しています。そこには、日本の運動会で見るような、「全員が主役」になるためのプログラムは一切ありません。
そもそも、多くの欧米の学校には運動会という概念すらありません。日本独特の文化である運動会は、「みんなで力を合わせ、ひとつのことを成し遂げる」という集団主義の象徴のように思われます。
しかし、その「みんな一緒」という心地よい響きの裏で、私たちは何か大切なものを見失ってはいないでしょうか?