
自文化の「当たり前」は、異文化の中では必ずしも通用しません。自分の「権利」を主張する前に、自身の言動が周囲に与える「影響」を想像してみる。このバランス感覚こそが、グローバルな環境で求められる本質的なスキル。日本人の「人に迷惑を掛けない」の精神は、世界基準で通用するはずです。(日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool創立者 中内玲子)
アメリカの幼稚園で「キムチ事件」が勃発
グローバル時代の本当のマナーとは?
もし、あなたが子どもに持たせたお弁当が、学校で「差別問題」に発展したら――。実際にアメリカの幼稚園で起こり、SNSで大論争となった「キムチ事件」を紹介しましょう。
発端は、ある園児がキムチ入りのお弁当を持参したことでした。園の先生は当該園児の保護者に電話して、「不快な臭いが他の園児の迷惑になる」と伝えたといいます。このやり取りがSNSで公にされると、「食文化の否定であり、人種差別だ」という批判が殺到し、瞬く間に炎上しました。
筆者は、このニュースを人種差別という一点で論じることには違和感を覚えます。多様な人種や文化が共存するカリフォルニア州で25年間、保育に携わってきた経験から、この問題の根底には、私たち日本人にも他人事ではない本質的なテーマが潜んでいるように思うのです。
SNSでは「食文化へのリスペクトがない」「アジア人への偏見だ」という声が多数を占めました。確かに、自国の食文化を否定されたと感じれば、悲しみや怒りが沸き起こるのも当然でしょう。現代社会では、香辛料や発酵食品の匂いが「スメルハラスメント」と指摘されるケースもあります。
しかし、本当に園の先生はアジア文化を否定する意図で、そう伝えたのでしょうか?