イルカの購入を巡って
二分される日本の水族館
この話には、まだ続きがある。この追い込み漁のイルカを買っていることが問題視され、さらに大きな騒動が起きた。世界動物園水族館協会(WAZA)の圧力を受け、日本動物園水族館協会(JAZA)が、加盟している園館に太地からのイルカの購入をやめるように通達したのである。
なぜ、イルカの購入にここまでナーバスになるの?と思うだろうが、そこで冒頭の動物園の話に戻るのだ。そう、大型動物の入手が難しい昨今、動物園の動物を外国の動物園などから融通してもらうためには、WAZAの協力が不可欠。
つまり、JAZAがWAZAから仮に除名でもさせられようものなら、日本の動物園が立ちゆかなくなる可能性がある。だから、日本側はこの圧力に屈せざるを得ない状況だったらしいのだ。
しかし、並み居る水族館は、全くの逆であり、イルカの購入が生命線だった。何せ、イルカはパフォーマンスも大人気だし、客を呼べる動物の筆頭格なのだ。それが買えなくなれば、死活問題というものだろう。だから、この通達後、先述のくじらの博物館(和歌山県)をはじめ、いくつもの水族館がJAZAを脱退した。
その結果、今や日本の水族館はJAZA加盟組と、脱退(および非加盟)組の2つに分かれてしまっている。もちろん、相互の交流はあるし、今は「日本水族館協会(JAA)」という別の団体もつくられているのだが、何ともきな臭い話が残ってしまった。
近い内に日本の水族館から
ラッコが消える!?
あおむけにぷかぷか浮かび、貝を器用に割って食べる、水族館の人気者、ラッコ……なんて言われて、数多くの水族館で飼育されていたのは昔の話。
今、国内ではラッコはわずか1館、鳥羽水族館(三重県)で2頭が飼育されているのみだ(ほか、マリンワールド海の中道[福岡県]で1頭飼育されていたが、なんと本書の執筆中に死亡した)。1990年代には、100頭以上が飼育されていたそうだが、どうしてここまで減ってしまったのか?……お分かりだろう、これも主にワシントン条約の軛(くびき)によるものである。