
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第13回(2025年10月15日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
なぜフミはタエに対してネガティブに見えるのか
心配な始まり。
「心配無用じゃ、あのかた(傅)はお強い」と言われましても、心配なのは傅(堤真一)の看病をタエ(北川景子)がしているから。お姫様育ちで、襖(ふすま)すら自分で開けたことがないとは驚いた。
かまどが炎上していても誇り高く薄く微笑んでいたように、傅にへんな看病をされて、余計に体調が悪化しても、ふふふと笑って見ていそう。
看病に行きたいとトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が言ったときのフミ(池脇千鶴)の顔。すっと姿勢は正したまま、薄目になっていて、明らかにトキが看病に行くことをよく思っていない顔だと感じる。
以前から、フミとタエには確執がありそうだったから、何か思うところがあるのだろう。その理由は薄々視聴者も気づいているが、なかなかはっきりとした答えが出ない。
銀二郎(寛一郎)が、トキが看病に行くことに反対する。だが、トキは彼が話してくれた『鳥取の布団』の怪談を例に挙げて、「私は薄情な人になりたくないのです」と言う。
布団の怪談では、幼い兄弟が周囲の人間の薄情によって命を落とした。タエも三之丞(板垣李光人)も驚くほど何もできないのを見過ごしたくないというトキの気持ちは尊重されることになった。
「傅はわしの永遠の宿敵」と司之介(岡部たかし)は言い、銀二郎にも「宿敵のひとりくらいもったほうがええぞ」とおすすめする。
傅を宿敵視している司之介。フミもタエを宿敵視している印象だ。微妙に匂わせつつ、なかなか明かされない、松野家と雨清水家の関わり。おかしなことにはやたらと饒舌だけれど、肝心のことはなかなか言わない。例の「あの話」とは何だったのか。あのままでは終わらないだろう。