北半球の高緯度地域に棲むラッコは、冷たい水に適応するため、空気を含んだ分厚い体毛を持つ。これが天然の良い毛皮になるため、乱獲されて絶滅寸前にまで減ってしまったのだ。そこで、当然の如くワシントン条約の保護対象にされた。これで打撃を受けたのが水族館であり、21世紀初頭には、それまでラッコを輸入していたアメリカ、ロシアからも買えなくなってしまったのだ。

 そこからはより積極的に繁殖が試みられたものの、いずれもうまくいかず、現在では前述の2頭のみに。しかも、動物園のパートでも書いた通り、この残されたラッコたちも例の如く高齢で、もう繁殖は望めないのだそうだ。つまり、近いうちに、日本の水族館からラッコが消える。

 しかし現在、保護されるようになったラッコに、当然毛皮目的の乱獲はない。それどころか、ラッコの個体数はむしろ増えているとされ、漁業被害が出ているところもある。

 例えば、北海道の襟裳岬や納沙布岬でも時折棲み着いたラッコが見られるのだが、大食漢な奴らは、漁業にとって重要なウニや貝を食い荒らすんだよね。それなのに、殺すことはもちろん、生け捕りで水族館に持ち込むことすらできない。

 人間の行いって、謎に極端だよなあ。