
お馴染みの魚や動物から名前も知らないような種まで、たくさんの生き物が展示されている「水族館」や「動物園」。実は今、これらの施設で“ある条件下”にいる生き物の高齢化が進み、今後見られなくなる可能性があるのだ。水族館・動物園の前に立ちはだかる壁について解説する。※本稿は、泉貴人『カラー版―水族館のひみつ―海洋生物学者が教える水族館のきらめき』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
生物の入手が大変なのは
動物園と水族館のどっち?
動物園と水族館、生物の入手はどちらが大変だろうか?答えは、圧倒的に動物園だ。ほら、キリンやゾウが動物園に欲しくなったからといって、「鉄砲持ってアフリカ行ってきまーす!」なんて、現代の世の中でできるわけないの、なんとなく分かるでしょ?
なぜかというと、まず動物園は、主役となる動物たちが圧倒的に大きい。人気者のキリンやゾウなんて、水族館にいる生物で同じぐらいのサイズになるのは、せいぜいイルカやサメぐらいなものかな。逆に、水族館で人気のイワシや熱帯魚サイズの生物なんて、動物園には滅多にいないもんね。
で、何が言いたいかというと、そんな大きな陸上動物たちは、得てして自然界では棲息数が少ない。そりゃ、ゾウ1頭が生きられる面積にネズミだったら1000匹ぐらいは入れるわけだから、当たり前だよね?そして、数が少ない生物は、それだけで絶滅のリスクが非常に高いのだ。だから、主にそういう大きな動物たちは、ワシントン条約などで厳重に保護されているんです。