会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

会社を伸ばす社長、ダメにする社長、ほんのわずかな違いとは?Photo: Adobe Stock

会社の車を私用で使うときの注意点

 本書を読んでくださっている方の中には、中小企業の経営者が沢山いらっしゃると思うので、特に注意しておきたいことがあります。それは、車についてです。

 中小企業の経営者には、会社の車をプライベートで使っている人が多いのです。

 会社の車で家族旅行へ行ったり、プライベートのゴルフへ行ったりということを平気でしています。これは厳密に言えば、業務上横領や背任です。

 それぐらい良いじゃないか、と思うかもしれませんが、その感覚では良い会社はできません。

 そのようなことを当たり前だと考えているから、会社を強く大きくできないし、たいして儲からないしょぼい会社から脱却できないのです。

 一番いいのは、会社の車とプライベートの車を2台持つことです。良い会社を作って、沢山給与を取って、会社とプライベートで車を2台持てばいいのです。

 でも、公私混同しているうちは、会社も大して儲からず、給与も大して取れないので、車を1台しか持てません。そういう状況で、会社の車をプライベートでも利用したいなら、購入費と維持費の1割を、自分で負担することです。

 そして、もしここまでの話を読んで、そんな細かいことまでしなければいけないのかと思った人は、経営者には全く不向きです。経営者を辞めたほうがいい

 そのままでは会社は大きくならないどころか、衰退の一途です。

購入費と維持費の1割負担を
ラッキーだと思えるか?

 一方、1割の負担だけでいいなんて自分はなんとラッキーなんだと思えた人は、会社を伸ばす経営者の素質があります。例えば、1500万円のレクサスを150万円で買えると思ったら、こんなにラッキーなことはないはずなのです。

 逆に「150万円出さないといけない」などとケチなことを思っている経営者だと、会社全体もケチな会社になって、うまくいかないわけです。

 車の購入費や維持費の1割を出せば、部下は文句を言いません。今までそうしていなくてそれを始めたら、「社長は変わったな」と部下は思います。

「良い社長になったな」と思うのです。1割負担して、「社長は悪い人になったな」と思う部下は誰もいません

 細かいことを話しているように思う人もいるかもしれませんが、できる部下ほど細かいことを気にするものです。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。