
モチベーションは高く、仕事もできるのに、“うっかりミス”が多い人がいる。性格だから仕方ないとは思うものの、仕事に支障が出ることもあるので、何とかならないものか。そんな悩みを聞かされることがある。なぜうっかりミスをするのか、どうしたら直るのか?それについて考えてみたい。(心理学博士 MP人間科学研所代表 榎本博明)
なぜか「うっかり」「何かと」忘れてしまう
何かとすぐに忘れる。うっかり忘れてしまうことが多い。それで仕事に支障が出る。このような従業員の扱いに困っている。そんな声を聞くと、どうしようもなくいい加減な人物のように思うかもしれない。
もちろんいい加減でやる気のない人物もいるだろうが、そのような人物であれば、それなりの処遇をすればよいので、処遇に悩むこともない。
問題なのは、ふだんの仕事ぶりからして、けっしていい加減な人物というわけではなく、むしろモチベーションが高く、能力的にも優秀なのに、なぜかうっかり忘れてしまい、仕事に支障が生じる、といったケースだ。
ある管理職は、そんな部下についての疑問を口にする。
「うちの部署に変わり者がいるんですよ」
「変わり者ですか。どんなふうに変わっているんですか?」
「普段接している分には特に問題ないし、変わり者って感じもないんですけど、何かと忘れてしまうんです」
「具体的には、どういうことを忘れるんですか?」
「たとえば、必要な書類を打ち合わせの場に持っていくのを忘れたり、人数分の資料のコピーを前もって用意しながら当日会議に持参するのを忘れたり。とにかくよく忘れるんです」
「それは困りますね」
「社内の会議でのミスなら何とでもなりますけど、取引先との打ち合わせの場に必要な書類を持参するのを忘れたり、先方と約束した納期に間に合うように商品を発送するのを忘れたりするのは、ホントに困るんです」
「そうですか。それは困りますね」
「そうなんです。弊社の信用にも関わりますし……でも、困っているのは、そこじゃないんです」
「いったいどういうことでしょうか?」