
65歳までの雇用義務化により、多くの企業で「年下上司と年上部下」の構図が急増している。マネジメント研修では「年上部下の扱いが難しい」という声が頻出。双方の心理的負担とミスコミュニケーションが、組織の生産性を阻害する現代の切実な課題を読み解く。※本稿は、坂本貴志・松雄 茂著『再雇用という働き方 ミドルシニアのキャリア戦略』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
多くの企業が課題を抱えている
「年上部下」と「年下上司」問題
職業人生が長期化する現在において、キャリアの最後の瞬間まで高位の役職に居続けることは不可能だ。ポストオフは、現代キャリアの大前提として受け止めざるを得ない。
定年後に再雇用を選択したとき、あるいは定年前でもポストオフに直面したとき、多くのミドルシニア社員は「年下上司」につくことになる。そして、自身は「年上部下」になる。そのときの上司は元部下であることも多いだろう。
ミドルシニア社員にとって、このような状況は何ともやりにくい状況になる。しかし、それは上司の側も同じである。年下上司との接し方は、ポストオフ後のミドルシニア社員にとって悩ましい問題であり、年下上司や企業にとって解決が必要な切実な課題となっている。
ここ数年、マネジメント研修を行うとほぼ必ず出るのが「年上部下の扱いが難しい」という話題である。「人手不足で事業運営に困難が生じている」「ハラスメントへの配慮、気を使う」「マネジャーのプレイング業務が忙しすぎる」「人事評価が難しくなっている」といった声も少なくないが、年上部下マネジメントに関する悩みがそれと同程度聞かれるようになったということが、近年の傾向として確実にいえる。