もしイノベーションを推進するのであれば規制緩和をどんどんやればいい。そうではなく、中小零細企業の賃上げに力をいれるなら大企業の下請けいじめを徹底的に摘発すればいい。どっちの方向でもやるなら全力でそれをやるべきです。
しかし現実の政治では、イノベーションが少し始まると規制が入ります。イノベーションが起きると困る既存業界が大きいので陳情が入るのです。
中小の下請けは現状、賃上げなどできません。でも政府は経団連と蜜月なので、下請けを叩く大企業にはゆっくりとしかメスをいれません。
最低賃金では介護事業者も最低賃金を上げなければいけませんが、有権者が嫌がるので介護報酬は上げていません。それでどうやって業界を成り立たせるのか理解できません。
実は高市早苗総裁は、こういったことを「やる」と断言する人です。言動がはっきりしているので嫌う人も多く、抵抗勢力は一斉に警戒しています。私も意見が違いますが、それでも5人の候補の中で「介護報酬を年内に見直す」というところまで踏み込んで発言されたのは高市候補だけだという点は評価しています。
「やるといったことをやる人だ」「その方向性が明確だ」という評価があることで、実際に株式市場と為替市場はそれを織り込んで動いた。これが高市トレードです。
ここは間違えてはいけないところですが、それを評価して動いたのではなく、それを織り込んで動いたということです。反対意見の人も円を売り、防衛銘柄の株を買ったのです。
ところがここからが茨の道です。高市新総裁の権力基盤は脆弱です。
まずもって最初の障壁は10月15日に総理大臣に指名されるかどうかわからない点です。少数与党の自民党ですから、15日までに連立の枠組みを強化する必要があります。この見込みが不鮮明なのです。
ここで政治が機能不全になっている根本の要因が登場します。日本の与党は右から左まで、保守からリベラルまで、かなり幅広く考え方の違うひとたちが、「数が力になるから」という理由で寄り集まっています。それで組閣すると違う意見のひとたちがたくさん入り込みます。