新刊『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』(ロジャー・ニーボン著/御立英史訳、ダイヤモンド社)は、あらゆる分野で「一流」へと至るプロセスを体系的に描き出した一冊です。どんな分野であれ、とある9つのプロセスをたどることで、誰だって一流になれる――医者やパイロット、外科医など30名を超える一流への取材・調査を重ねて、その普遍的な過程を明らかにしています。今回は、雑用を押し付けられがちな新人におすすめの考え方を、『EXPERT』の内容を元にお届けします。(構成/ダイヤモンド社・森遥香)

誰もが通る「雑務の時代」
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』には上のような一節があります。
キャリアをスタートした誰もが経験するのは、面白くも華やかでもない仕事です。コピー取り、資料のホチキス留め、誰もやりたがらない単純作業…。
それらは本人にとっては意味の見えない「雑務」でしかなく、「自分は何をしているんだろう」と虚しさを覚えることもあるでしょう。まるで機械の部品のように扱われる感覚。けれど、その「クソみたいな仕事」を避けることはできません。
無意味に見える仕事に潜む意味
では、なぜそんな仕事を若手が背負わされるのか。
このような理由が考えられます。
姿勢を見せるため:好き嫌いせずやり切れるかどうかで、周囲はその人を測っている。
全体像を知るため:雑務を通じてしか見えない組織の流れや人の動きがある。
耐える力を得るため:成果がすぐには返ってこない環境で働けるかどうかが、後の成長を左右する。
「クソみたいな仕事」は将来の自分を支えるために避けて通れないのです。
「降ってくるもの」をどう受け止めるか
本当に大事なのは、「上から降ってくるもの」をどう受け止めるかです。
文句を言いながら嫌々やるのか。意味を見出しながら自分の力に変えていくのか。その差は、数年後には歴然としたものになります。
やがて人は立場が変わり、自分が「上から仕事を降らす側」に回るときがきます。そのとき、かつて自分が担った雑務の重みを理解していれば、部下にただ押しつけるのではなく、意味を伝えることもできるでしょう。
仕事とは、自分の望んだことだけで成立するものではありません。意味の見えない仕事をどう咀嚼するか、その態度こそが、未来のキャリアをつくるのです。
(本記事は、ロジャー・ニーボン著『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』に基づいた記事です。)