新刊『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』(ロジャー・ニーボン著/御立英史訳、ダイヤモンド社)は、あらゆる分野で「一流」へと至るプロセスを体系的に描き出した一冊です。どんな分野であれ、とある9つのプロセスをたどることで、誰だって一流になれる――医者やパイロット、外科医など30名を超える一流への取材・調査を重ねて、その普遍的な過程を明らかにしています。今回は、仕事の「面倒くさい」がなくなる考え方を、『EXPERT』を元にお届けします。(構成/ダイヤモンド社・森遥香)

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面倒くさい仕事とどう向き合うか

私たちの日常の仕事には、どうしても「面倒だな」と感じる部分があります。書類のチェック、同じ作業の繰り返し、地味な準備――誰もができれば避けたいと思うようなことです。

しかし、『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』ではこう語られています。

どんな仕事にも退屈な部分があって、それはやり切るしかない。退屈を免除される人も、退屈を経験しない人もいない。その事実に対処できない人は苦労することになる。
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.82より

面倒な仕事は「避けるもの」ではなく「通過点」

私たちはつい、「面倒なことは他人に任せればいい」「テクノロジーに置き換えればいい」と考えがちです。けれども、著者は注意を促します。

単純で退屈な仕事は、自分以外のだれかに、あるいはテクノロジーに任せればいいと考えてしまう。しかし、それでは大切なことを取りこぼすことになる。
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.82より

面倒な仕事をすべて回避してしまえば、そこに隠れている“本質的な学び”を失ってしまうのです。

面倒さに「意味」を与える

エキスパートたちは、退屈で面倒な繰り返しの中に、工夫や気づきを見出してきました。外科医は数えきれないほどの縫合を繰り返しながら正確さを磨き、音楽家は同じフレーズを何千回も練習しながら独自の表現を掴んでいきます。

面倒な仕事を「単なる作業」として扱うのか、「自分を鍛える稽古」として受け止めるのか。その違いが、一流に近づけるかどうかを決めるのです。

効率化や自動化が進む時代だからこそ、面倒な仕事に取り組む姿勢が差を生みます。他の人が敬遠する仕事にも立ち向かえる人こそが、キャリアを長期的に伸ばしていけるのではないでしょうか。

(本記事は、ロジャー・ニーボン著『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』を元に構成した記事です。)