娯楽の街ロサンゼルス、経済苦境はパニック映画並みハリウッドの娯楽産業は下降スパイラルに陥っている

【ロサンゼルス】米東部メリーランド州ボルティモア出身のブライアン・メイノルフィ氏(54)は、1994年にカリフォルニア州ロサンゼルスにやってきた。以後ずっと絵を描き続けている。最初はアニメシリーズ「ルーニー・テューンズ」の伝説的アニメーター、チャック・ジョーンズ氏の助手だった。その後、ディズニーのアニメ映画「ノートルダムの鐘」や「ムーラン」の製作に加わったほか、テレビアニメ「アメリカン・ダッド」に10年間携わった。

 この仕事の魅力はシンプルだ。「人々はカートゥーン(漫画・アニメ)が大好きだし、僕はカートゥーンを作るのが大好き」だからだ。

 2024年に最後の番組が中止されて以降、メイノルフィ氏の芸術活動はスケッチブックに恐竜とモンスターを描くことだけとなった。エンターテインメント業界で働く何千もの人々と同じように、映画・テレビ番組の製作が急減速した巻き添えを食っている。同氏が見つけた唯一の仕事は、車で3時間離れたカリフォルニア州立大学のキャンパスでアニメの授業を行うもので、収入は週350ドル(約5万3000円)だ。

 家族4人がメイノルフィ氏の年収約10万ドル(約1500万円)で暮らす生活は決してぜいたくではなかったが、今や、退職金と大学進学資金を取り崩し、生活費を切り詰めながら、カリフォルニア州バーバンク郊外にある平屋建ての3ベッドルームの家で生き延びようとしている。仕事不足のあおりで、同氏が加入する組合の健康保険は年末で廃止になる。ついに人生で初めて、絵を描く以外の仕事に就こうと考えている。

「年内に何も見つからなければ、大型量販店やスーパーの求人に応募するしかない」

 映画・テレビ業界で働く夢を追い求め、ロサンゼルスに移住した人は大勢いるが、ハリウッドスターや一流の映画監督に上り詰め、何百万ドルも稼げる人はごくわずかだ。他の人はセットを組み、カメラを操作し、スケジュールを管理し、全ての映像や音響が完璧になるように仕上げる。映画はクランクアップを迎え、テレビ番組は打ち切られるため、決して安定した仕事ではないが、地位の確立した専門職が2、3カ月以上も仕事がないことはまれだった――今までは。