
リサ・スー氏が2014年に米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の最高経営責任者(CEO)に就任した時、同社の時価総額は30億ドル(約4516億円)弱だった。
現在の時価総額は3300億ドルを超え、100倍以上に増加した。これは、AMDがゲーム向けグラフィックスカードやパソコン用プロセッサーの製造を主軸とする戦略から、人工知能(AI)革命を支えるデータセンター向けチップにより重点を置く戦略へと、いかに巧みに転換したかを反映している。
AMDは6日、人気の消費者向けAIモデル「チャットGPT」を手掛ける米オープンAIとの提携を発表し、株価が24%上昇した。オープンAIは契約条件に基づき、AIモデルがユーザーの質問に応答することを可能にする推論機能向けに6ギガワット(GW)のコンピューティング能力を供給するため、AMD製半導体を数万個購入する。
この契約はAMDの株価と、AI半導体業界で圧倒的に優位に立つ競合企業エヌビディアと競争するAMDの野心に勢いを与えた。
6日の契約では、オープンAIが所定の目標を達成し、AMDの株価が上昇した場合、オープンAIに対してAMD株最大1億6000万株を1株当たり0.01ドルで取得できるワラントが付与されることになっている。
最終トランシェは、AMDの株価が600ドルに達した場合にのみ権利を行使できる。その時点でAMDの時価総額は1兆ドルとなる見込みだ。
現在、時価総額4兆5000億ドルのエヌビディアはAMDの約14倍の規模で、AIの訓練と推論を支える画像処理半導体(GPU)市場でのシェアは75%を超える、とアナリストの大半が推定している。
しかしエヌビディアはAMDに加えて、オープンAIなどの顧客向けに特定用途向けカスタムチップを製造する米ブロードコムや、自社チップの設計を始めたところもある大口顧客からも圧力を受けている。