会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。

【要注意】「言語化ハラスメント」が職場で急増中。部下を黙らせる“一言”とは?Photo: Adobe Stock

早くも出てきた「言語化ハラスメント」

ここ数年、「言語化」が注目を集めています。中学2年生のころから「言語化」を研究してきたぼくとしては、世のビジネスパーソンに着目してもらえるのはとても喜ばしいことです。

しかし同時に、早くも「言語化ハラスメント」が発生しているのが残念に思います。

「言語化ハラスメント」とは、思考や感情をうまく言葉にできない人に対し、『ちゃんと説明しろ』『言語化できていない』『お前が言っていることは曖昧だ』などと過度に叱責・非難することを指します。

本来、言語化とは「お互いが考えていることを明確にして、コミュニケーションを円滑にするため」に行います

もちろん、自分が言いたいことをしっかり言語化して伝えられた方がいいです。ですがそれが「できない人を責める大義名分」になってしまっては逆効果です。こうなると、より相手は自分が言いたいことを表現できなくなり、対話の場を壊してしまいます。

ハーバードの研究によれば、ぼくらの頭のなかの95%はあいまいです。つまり、ほとんどの人が「なんとなくそう思う」レベルでしか自分の感覚を認識できていません。これは能力の問題ではなく、人間の構造的な特性なのです。

にもかかわらず、ビジネスの現場では「言語化できない=無能」というレッテルが貼られがちです。

しかも「言語化できている・できていない」の判断が、立場の強い人(例えば上司)の恣意的な感情で決めつけられてしまうこともあります。上司の気分で「お前はできていない」と叱責しているようなイメージです。

立場が強い人が恣意的に判断することがある

ビジネスの現場では「説明が上手い人=デキる人」とされやすく、逆に「言葉にできない=考えていない」とみなされがちです。

実際、ぼく自身もサラリーマン時代に上司から「お前が考えていることは全くわからん。もっといい感じに、うまく調整して仕事をしろ」と言われた経験が何度もあります。

どこがどのように悪いかは指摘してもらえず、「おまえの説明はわかりづらい」「言いたいことが全く分からない」とあいまいなプレッシャーを受けていました。これはまさに言語化ハラスメントの典型例です。

繰り返しになりますが、言語化できた方がいいです。しかし、誰でも100%言語化できているわけではありません。お互いに自分が伝えたいこと・相手が伝えたいことを明確にするために歩み寄ることが言語化のプロセスです。