両親は泣き声を聞いた時より、ニュートラルな音やポジティブな音を聞いた時に脳の信号がより強く一致した。これは適応的な反応で、なぜなら赤ん坊の泣き声に両親ともストレス反応を示すのは誰にとっても有害になりうるからだという。両親の脳が互いに協調して「共同で差し迫った行動を調整する」潜在能力を反映しており、この能力は子育てにおいて明確な利点があるだけでなく、人生を共に築いていく際にも有益である。

母親としての自分を
受け入れる過程で脳が変化する

 アツィルには、母親の他の大人との関わり方についての別の研究もある。アツィルとテルアビブ大学の神経科学者タルマ・ヘンドラー、ヘルツリヤ学際センターのルース・フェルドマンは、他の乳児と母親のペアの様々なやりとりを見せながら、母親たちの脳をスキャンした。

 一部のビデオでは、母親がリラックスして赤ちゃんに愛情を持ちながら関わっていた。他のビデオでは、母親が赤ちゃんと関わりを持たず、不安そうだったり反応が不自然であったりした。前者の「同期した」相互作用のビデオを見た時、母親たちの脳は報酬やメンタライゼーションに関連する領域でより強く反応し、シミュレーション、つまり他者の行動を心の中で具現化する領域でも反応した。

 他の母親の社会的同調性を自分に反映させることで反応したのだろう。健全な母子関係を目にし、自分のことのようにシミュレーションすることで脳が反応したのだ。

 これは納得できる。この数年、私は他の母親との友情を大切にしてきた。恐ろしい世界情勢やパンデミックの時世に友人たちが喜びと連帯感を与えてくれ、チャイルドシートのつけ方やコロナ流行時の遊び方のルールといった具体的なことから、抽象的なことまで、有形無形の助けをくれた。

 新たに親になれば、一度に多くの変化が現れ、他人の服を着ているような、責任という名の制服に全くフィットしていない感覚を覚えることがある。