これまでの研究で、脳の特定領域のつながりが、家族生活に必要な利他主義の精神を育む協力や、行動の柔軟性と関連していることがわかっている。
神経科学者は同じ作業(例えば子供のビデオを見ること)であっても、別々に何かをしている時に2人の脳を観察するのは限界があるとしている。人間関係は瞬間瞬間で存在するのではなく、継続的かつ進化する相互作用として存在し、他者の精神状態を読み取り、影響を与え、また逆に影響を受けるからだ。互いに心を読み合うことで、脳が「私たちモード」になり、一緒に働くという説もある。
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子育てを通して
夫婦関係も変わる
2人の人間がそうしたつながりを持つのは子育てに限らず、人間社会の本質的な特徴なのかもしれない。パートナーのいる多くの親にとって、協力して赤ちゃんの世話をすることは、それまでの経験の中で最も強烈で複雑な共同作業であり、大きな要求やリスク、潜在的利益を特徴とする。赤ん坊のサインを読み取り、反応する能力が強化されるのと同様、パートナーのサインを読み取り、反応する能力も強化されるのは当然だろう。
複数人がリアルタイムで相互に作用する脳活動を観察する神経科学は、現時点では技術的にも統計学的にも難しい。テクノロジーがまだかなり限定的で数は多くないが、この分野の科学が向かっている方向であることは確かだ。
最近の研究では、国際的な研究グループが機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて、幼い子供がいる24組の両親を対象に神経反応を測定した。fNIRSは頭に送光器と受光器を取りつけた装置をつけ、脳表面の血流を測定する。前頭前皮質の活動は、乳幼児と大人の笑い声や泣き声を聞いた時、および雑音で測定された。両親が同じ部屋で同時に音を聞いた場合、別々に測定した場合より注意制御と認知制御の中枢が同期しているようだった。これは、両親ではないペアをテストした場合には見られなかった。







