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子育ては大きな喜びをもたらす一方で、養育者に大きな負担を強いるのも事実だ。時間も体力も奪われる子育てを通して、私たちは何を得て何を失うのか。親になることで起きる脳の変化について、米国人ジャーナリストが解説する。※本稿は、チェルシー・コナボイ(著)、竹内薫(訳)『奇跡の母親脳』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
親になることで
神経回路が強化される
親になる初期の移行期には、一時的とはいえ、記憶機能や注意集中力が「代償」として失われることがあるという事実を認めることにしよう。投資に見合う利益はある。社会的な処理を行う回路、他者からのサインを読み取り、意味ある方法で反応する能力は親になることで強化されるようだ。こうした変化=利益は他の人間関係、パートナーとの関係のように特に親密な関係にも当てはまるだろう。
10年ほど前、シル・アツィルらは15組の母親と父親のカップルを対象に、自分の赤ちゃんと他人の赤ちゃんのビデオを見てもらいながら脳をスキャンした。カップルは自分の赤ちゃんを見ている時に、心の理論、共感、運動反応に関連する脳領域が同様に活性化することがわかった。これらの相関関係から、「両親はリアルタイムで、乳児の状態やサインに対する直感的な理解を共有している可能性がある」という。
イスラエルのバル=イラン大学による別の研究では、全員が初めて親になる42組のカップル(うち約半数は同性カップル)の脳をスキャンし、6年間、家族を追跡し子育てと家族力学の神経的、ホルモン的基礎を調査した。結果は微妙なものだったが、線条体の動機づけに関連する領域と、共感や情動の制御に関連する腹内側前頭前皮質のつながりが強い親は、時間をかけてより協力的な子育てを行うことがわかった。







