最近、「チームで仕事をする」ことが増えていませんか? 自社の前例が通用しない現代において、他社、地域、行政など、他者と協力して答えを出すやり方にシフトする企業が増えています。一方で、価値観や背景のすれ違いや衝突にモヤモヤすることも……。
「立場やお金の力で人を動かすことは、正しいチームプレーではありません」
そう語るのは、組織開発の専門家である沢渡あまねさんと、デザイン経営の研究者・実務家である下總良則さん。400以上の組織やチームを見てきたふたりは、「他者と協力して結果を出せる人たちには共通する行動法則がある」と言います。それをまとめたのが、書籍『チームプレーの天才』です。これまで言語化されてこなかった「チームプレー」のコツを、具体的な93の技術として紹介。発売前から話題の同書から、内容の一部を紹介します。

チームで結果を出せる人は「熱意」を押し付けたりしない。では、どうやって意欲を引き出す?Photo: Adobe Stock

個人的な「ビジョン」を押し付けない

 チームにおける共通の目標、いわゆる「ビジョン」がまだ不在である場合もあります。
「あなたがやりたいことや、熱意を素直に言葉にすればいいんです」と言ってしまえば簡単ですが、それだけではうまくいきません。

 チームのメンバーが共感や納得していない状態で、地位や威圧感などによって個人的なビジョンを押し付ける。それは共創とは異なる、チームプレー1.0や2.0の振る舞い。

「チーム」でうまくプレーするには、そのビジョンに、メンバーたちにも共感・納得してもらう必要があります。

「3方向地図」を描いてみよう

 チームのメンバーや関わる人たちの多数が腹落ちできるビジョンを創るために、皆で描いてもらいたいのが「3方向地図」です。

 3方向地図とは、あなたたちチームの活動が、誰にどんな意味や意義をもたらすかを示した図です。

 この図をチームメンバーや関わる人全員(または複数名)で描く。それはメンバーがチームの活動に共感できるポイントを探りつつ、その活動の内容と、メンバー個人が持つビジョンや思いの「景色」を合わせる意義をもたらします(このような所作を、私は「景色合わせ」と呼んでいます)。

チームで結果を出せる人は「熱意」を押し付けたりしない。では、どうやって意欲を引き出す?書籍『チームプレーの天才』より

描いた「図」が、チームのビジョンになる

 上の図を見ていただくとわかるように、3方向地図の中に「ビジョン」たる言葉は登場しません。関わる人たちにとっての「意義」が描かれたこの図自体が、チームの思いを1つにする「ビジョン」として機能するからです。

 無理に「1つの表現」にする必要はありません。チームの活動に関わる人たちがそれぞれ「その活動をやりたい」と思える未来を描くことが、何より重要です。

 ちなみに3方向地図は、近江商人の経営哲学である「三方よし」(売り手、買い手、世間[社会]の3つの方向の人たちをより良くする考え方)を参考にした筆者の造語です。必ずしも3方向でなくても、4方向でも5方向でもかまいません。

(本稿は、書籍『チームプレーの天才』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、他者とうまく仕事を進めるための具体的な93の技術を紹介しています)