自撮りのトレンド~SNOW、ナチュ盛り

 ここまで自撮りの最新トレンドをご紹介してきましたが、スマホで自撮りをする文化が始まって約10年、自撮りにも歴史が生まれてきました。

 自撮りの流行のきっかけは、自撮りアプリ「SNOW」(以下、SNOW)のヒットです。2016年頃から、動物の耳や鼻がついて目が大きくなるスタンプが女子高生を中心に人気となりました。こうした加工アプリの撮影では、友人と様々なスタンプを試しては撮影するため、それ自体が楽しい体験になります。この頃から、今まで自撮りをしたことがない大人も、「SNOWならやってみたい」と撮影し始めました。スタンプを施してお決まりのセリフを言うミームも生まれ、当時はTwitterに投稿する人もたくさんいました。

 また、SnapChatやInstagramといったSNSのカメラ機能にも様々なエフェクトが登場し、海外セレブもスタンプ加工に熱狂しました。

「SNOW」(SNOW)口を開けるとクッキーを食べるスタンプ。画面は「SNOW」(SNOW)です

 2019年頃からは「ナチュラルな盛り」、略して「ナチュ盛り」に注目が集まるようになりました。あまりにも行き過ぎた加工をすると、自撮りと現実が違い過ぎて恥ずかしいと思うようになったためです。ナチュ盛りは、肌を明るくし、きめを整え、少し目を大きくするといった加工をするため、ぱっと見では加工していることに気づきません。

 自撮りアプリに関しては、SNOWが開発した「SNOW」や「B612」が圧倒的なシェアを占めていましたが、最近は中国Meituの「Meitu」や「BeautyCam」、シンガポールPixocial Technologyの「BeautyPlus」も人気があります。

 さらに、フィルムカメラのような撮影ができる「Dazz」(DAZZ PTE. LTD.)、ふわふわ加工で写せる「わたあめカメラ」(kenji hara)などは、顔だけでなく全体をぼんやりと加工できます。こうした加工により、単純に隠すだけでなく、「エモさ」を演出できます。

iPhone標準カメラが見直されてきている

 そしてここ数年は、スマホの標準カメラで撮影することが人気です。標準カメラで無加工撮影であることの価値が見直されてきているのです。特に若者からは、iPhoneのカメラが高評価を得ています。

 iPhoneのカメラ人気はアプリにも派生しており、「BeautyCam」にある「iPhoneカメラ」モードは、iPhoneで撮影している色味になっているとされ、人気があります。「iPhoneの標準カメラで撮影するより盛れる」との意見もあり、iPhoneを使っている人がアプリのiPhoneカメラモードを愛用するケースもあります。

「BeautyCam」アプリの「iPhoneカメラ」モード「BeautyCam」アプリの「iPhoneカメラ」モードには、iPhoneの歴代機種のモードが用意されています

 今や、自撮りはAI加工によってアニメ風やマンガ風にもできるようになりました。静止画だけでなく動画での自撮りでも多用されています。このあたりのお話は、次の記事でご紹介する予定です。