自民・維新で高市新政権、ようやく船出
船が出来さえすれば行き先はどこでもよい?

 紆余曲折の末、自民党が日本維新の会と連立を組み、10月21日に自民党総裁の高市早苗氏が首相に選出された。

首相指名後、与党党首会談に臨む自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会の吉村洋文代表首相指名後、与党党首会談に臨む自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会の吉村洋文代表=10月21日、首相官邸 Photo:JIJI

 公明党の連立離脱表明から10日余り、首相指名や与党形成で、自民と野党、野党間での連立や連携拡大を巡る合従連衡の政治劇が展開され、メディアや国民の関心も集まった。

 もちろん、安定与党を作らなければ、予算や法律、政策を通すことができないので、安定与党が必要であることは間違いない。しかし、それだけでは十分ではない。

 自民党総裁選出から高市内閣発足までの期間、「日本が直面しているのがどのような問題なのか、その解決のためにどのような方向を目指すべきか」という議論は、ほとんどされなかったように思う。

 例え話で言えば、次のようなことだ。住んでいる島が水没してしまうので、船を作って移住しなければならない。しかし、その船で一体どこに向かうのか? 目的地によって船の仕様は変わるはずだが、目的地を決めないで、船を作ることだけにエネルギーが集中された。

 実際、公明党の離脱を受けて、自民党は、最初、国民民主党にアプローチを試みたが、それが難しそうとなると、連立の相手を維新に切り替えた。こうした経緯を見ていると、船が出来さえすればよいのであって、行く先はどこでもよいとされているような印象を受ける。

 現在の日本では、手段だけが論じられており、達成すべき目的が忘れられているのではないだろうか? 政権形成のプロセスに国民の注目が集まるあまり、「日本をどこへ導くのか」という根本の問いが置き去りにされ、手段の目的化現象が起きているのだ。

 自民党と維新の会は連立政権形成にあたり、政策協議を行い合意文書がまとめられたが、しかし協議は超短期間で、しかも経済などの問題は、ガソリン暫定税率の廃止や物価高対策の補正予算編成、薬剤の自己負担見直しなどが盛り込まれただけだ。これは、先の例で言えば、船の仕様を慌ててしつらえたものであり、目的に関するものとは言い難い。

 新たな連立政権を作るなら、解決する必要がある日本の根本問題の議論をきちんとするべきなのだ。